華夏の煌き
老師のあとについて晶鈴は占術の邪魔をしないように静かに歩いた。隔てる壁やついたてはなく、占い師たちは各々研鑽している。細長い棒を何本も持つもの、水晶の玉をのぞき込んでいるもの、札を何枚も扱っているもの様々だった。
話をするときだけ、小部屋に入る。
「で、今日はどうであったかな」
優しそうに孫娘に語り掛けるようなまなざしを向ける。この太極府で一番権力を持つ彼だが、晶鈴は緊張することなく安心して話すことができる。
「えっと、あ、うーんと」
「どうした?」
王子のことを占ったことをどうごまかそうかと思案しているうちに、老師に続きを言われてしまう。
「今日は二回占ったであろう」
「はっ、あ、はい……」
「だから遠慮せずに申すがよい」
老師には隠し事ができないなと、晶鈴は詳細を話した。
「なるほど。友が二人。一人は王子か」
「隆明さまはどんなお方なのですか?」
「隆王子はとても聡明な方でな。学問もよくお出来になるし。この曹家の長子であるが、生みの母であった王后が亡くなられておる」
曹隆明は王の嫡男で王太子の身分ではあるが、現在の新しく建てられた王后に次男の博行が生まれたところだった。老師の暗い表情に晶鈴も不安になる。
「隆王子の代で、この曹王朝はますます発展するはずだが……」
「大丈夫ですよ」
「隆王子はお寂しいはずじゃからな、陰ながらお仕えしなさい。表にはあまり出ぬように」
「わかってます」
幼いながらも晶鈴には自分の立場がよくわかっている。孤独をよく知っている晶鈴は、隆明の孤独もよくわかった。今度誰もいないところで会えたなら、「隆兄さま」と呼ぼうと頭の中で練習した。
「さて、そろそろ石を増やそうかの」
陳老師は棚から小さな濃紺の包みを取り出す。晶鈴の目の前で、そっと包みを広げていく。中には透明感のある紫の小石が多くある。
「これはなんですか?」
初めて見る美しい宝玉のような石に晶鈴はうっとりする。
「これは流雲石というものじゃ、ほらここに文字があるじゃろう」
老師は印が刻まれたほうを上に向け説明を始める。色々な印があり、それぞれに意味があるようで、偶然を使って占い卜術の道具だった。
「こんなにきれいな石を占いに使うんですか」
話をするときだけ、小部屋に入る。
「で、今日はどうであったかな」
優しそうに孫娘に語り掛けるようなまなざしを向ける。この太極府で一番権力を持つ彼だが、晶鈴は緊張することなく安心して話すことができる。
「えっと、あ、うーんと」
「どうした?」
王子のことを占ったことをどうごまかそうかと思案しているうちに、老師に続きを言われてしまう。
「今日は二回占ったであろう」
「はっ、あ、はい……」
「だから遠慮せずに申すがよい」
老師には隠し事ができないなと、晶鈴は詳細を話した。
「なるほど。友が二人。一人は王子か」
「隆明さまはどんなお方なのですか?」
「隆王子はとても聡明な方でな。学問もよくお出来になるし。この曹家の長子であるが、生みの母であった王后が亡くなられておる」
曹隆明は王の嫡男で王太子の身分ではあるが、現在の新しく建てられた王后に次男の博行が生まれたところだった。老師の暗い表情に晶鈴も不安になる。
「隆王子の代で、この曹王朝はますます発展するはずだが……」
「大丈夫ですよ」
「隆王子はお寂しいはずじゃからな、陰ながらお仕えしなさい。表にはあまり出ぬように」
「わかってます」
幼いながらも晶鈴には自分の立場がよくわかっている。孤独をよく知っている晶鈴は、隆明の孤独もよくわかった。今度誰もいないところで会えたなら、「隆兄さま」と呼ぼうと頭の中で練習した。
「さて、そろそろ石を増やそうかの」
陳老師は棚から小さな濃紺の包みを取り出す。晶鈴の目の前で、そっと包みを広げていく。中には透明感のある紫の小石が多くある。
「これはなんですか?」
初めて見る美しい宝玉のような石に晶鈴はうっとりする。
「これは流雲石というものじゃ、ほらここに文字があるじゃろう」
老師は印が刻まれたほうを上に向け説明を始める。色々な印があり、それぞれに意味があるようで、偶然を使って占い卜術の道具だった。
「こんなにきれいな石を占いに使うんですか」