華夏の煌き
「うむ。この石は霊力のある石で、むしろ占いにしか使えない。下手に装飾品などにすると、体調不良を起こしかねん」
「へえ」

 綺麗な石よりも、輝かせる瞳で晶鈴は流雲石を眺める。老師はやはりこの道具を扱えるものは晶鈴しかいないと思っていた。

「晶鈴の住んでいた村よりもはるか西方のかなたから伝わったものだ」
「わたしの村よりも、もっともっと西……」

 故郷の草原に思いを馳せ、さらに心を西に旅させる。手のひらに一つ紫の石を置いてみると、ひんやりとして硬いが、柔らかさも感じた。晶鈴の持つ力をこの石はより増幅させていくのだった。


4 北西の村
 辺境にある小さな村では、あらゆる民族との交流があったので、逆に侵略におびえることも、戦乱に巻き込まれることもなかった。晶鈴の母は彼女を生んですぐ死んだ。父親もすでに他界していたので、晶鈴は、両親の顔を知らなかった。母親の兄夫婦に育てられるが、子だくさんの家族の中、十把一絡げの扱いで特に楽しくもなく辛くもなかった。兄妹に交じって家畜の世話をし、繕い物をする毎日だった。
 彼女が7歳になった時に生活が一変する。この村では見たことのない華麗な馬車が到着する。馬車の前後には騎馬隊もついている。村人がざわざわ馬車に注目していると、馬車は広場に停まり、中から濃紺のつややかな衣に身を包んだ陳賢路老師が出てきた。白いひげを一撫でし村人たちに発令する。

「わしは中央から参ったものである。今日、太極府に招かれるものを探しにまいった。この村で母親を亡くした10歳以下の娘を広場に集めよ」

 騒めく村人たちはああでもないこうでもないと話し合いながら、該当する娘を3人連れてきた。一人は最近、母を亡くした娘。もう一人は3年前に母を亡くした娘。そして自分の命と引き換えに亡くなった母の娘、晶鈴だった。
 陳老師は3人を見比べる。二人の娘はもう10歳になるところなので、これは好機だとわかっていた。中央にいけば生活の保障はもちろんのこと、過分な望むを得ることさえできるかもしれないのだ。
 晶鈴はぼんやり立ったまま、さっき草原で転んで、こすった緑と茶色の汚れた頬を撫でていた。
 老師は懐から何個かの小石を取り出し、3人に見せる。手のひらには小石とヒスイやメノウなどの玉が混じっている。

「石の違いがわかるかね?」

 一番年長の娘が、まん丸のヒスイを指さす。

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