華夏の煌き
 思わず、自分と彰浩の出会いの話をしそうになったが、やめてその息子が今、自分が生きていることを知り追いかけてきたこと、そして自分が晶鈴に衣装を貸したことで、京湖と間違えられて捕らえられたであろうと話した。

 話を聞いた慶明は大きくため息をついた。

「晶鈴は……すぐに人違いだとは言わないだろうな……」

 彼の言葉を聞き、京湖も彰浩もやはりそうなのだとうつむく。

「昔からそうだった。自分が損をしているのがわかってないというか、状況を楽観視しすぎているというか……」

 慶明は晶鈴が都から追い出されたことを思い唇をかむ。能力を失ったとはいえ、彼女が悪いわけではなかった。王太子を責めることも勿論できないが、黙って引き下がることもなかろうにといまだに思う。

「すみません。私のせいです。彼女を巻き込んでしまった……」

 大きな黒い瞳が潤んでいることに気づき、慌てて慶明は手を振る。

「失礼した。あなたを責めているわけではないのだ。とりあえずここにいてもらったら大丈夫だ」
「いえ、お世話になるつもりは……。こちらに来れば、晶鈴を救い出せるかもと」
「晶鈴が人違いだとわかったらどうするか……」
「あの、星羅の父親は」
「星羅の父親か……」
「やはり、あなたではないのですか」
「ええ、そうだったらよかったのに」

 愁いを含む笑顔に京湖も切ない気持ちになった。

「とにかく今日はもここでお休みください。もう少し話し合いましょう」
「いえ、宿を探しますわ」
「ふふ。もう二人とも夢の中ですよ」

 慶明の視線の先には、彰浩に抱かれた二人の子供たちが抱き合って眠っているところだった。慶明は、使用人に合図をして家族を泊まれるように手配し案内させた。

 これからどうしようかと慶明が考えているところへ、下女の春衣がやってきた。彼女はもう女中頭で屋敷の中のことをほとんど取り仕切っている。

「慶明さま、もしかして先ほどの子供は?」
「ああ、気づいたか。晶鈴の娘だ」
「まあ! やはり! で、晶鈴さまは?」

 春衣は懐かしさで胸がいっぱいになる。

「それが、さらわれたようで行方が分からんのだ」
「そんな……。これからどうするおつもりですか?」
「しばらく考える。――このことは夫人には内緒にしておいてくれ」
「え、ええ。もちろんです」

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