もうちょっとだけ、秘密。
ピョコンと跳ね起きたこなつは、いそいそと鞄を漁ってスマホを取り出す。

画面を見るなり、「うひゃー」と悲鳴とも感嘆ともとれる声を漏らす。

「2時間放置しただけで通知がえげつないことに…レオのは大丈夫なの?」

僕は無言で自分のスマホを掲げる。

「あ…なんか、ごめん」
「別に」

そんな憐れな目で見られても…。

そもそもこうやって夏休みに誰かに呼び出されているのが僕にとってはイレギュラー。

まぁ、それも…。

正面に座る、事の元凶に目を向ける。

相手がこなつじゃなかったら100%断ってるんだけど…、とは口が裂けても本人には言わない。

しばらく黙々とスマホをタップしていたこな
つが、急にガバリと顔を上げる。

それまで見ていたということがバレないように、瞬間的に視線を窓の外に向ける。

すること全部、突拍子ないから危険なんだよな、コイツは。

「ねぇレオ、これ見て!」
「あ?」

動揺を悟られまいと、あえてそっけなく返事をする。

「かっわいいでしょ!」

ズズイ、とドヤ顔で目の前に押し付けられたのは、スマホの画面。

そこにはアイドルか誰かの、キメ顔が映し出されていた。

「この子、私の推し!というか、天使」

僕はチラリと画面の中に目をやり、すぐに自分のスマホに目を戻す。

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