もうちょっとだけ、秘密。
「確かに、ズボラなのはどうにかしないとなぁ。このままじゃ残り半分くらいの高校生活、彼氏なしで過ごすことになっちゃう」
「ま、一般的にはモテないよな。ズボラは」

なんとなくした返事に、こなつは勢いよく反応する。

「参考までに聞くけどさ、レオは『彼女にするならこんな子がいい!』とかないの?」
「よく分からん。彼女いたことないし」
「あー、やっぱり」
「勝手に納得するな。なんかムカつく」

ニヤニヤするこなつを目の端で睨む。自分だって彼氏いない歴=年齢のくせに。

「でもさ、理想ぐらいは誰にでもあるんじゃないの?なんでもいいから教えてよ」

それでもめげずに尋ねてくるものだから、仕方なく丁度良い答えを探す。

「強いて言うなら…」
「うんうん」
「こなつ以外………」

僕は前髪をかき上げてから、口の端を持ち上げる。


「が、いい」


輝いていたこなつの瞳から、光が消えた。

こなつはじっくり時間をかけて、僕の答えを読み込み、理解して…。ぷしゅーと空気が抜けるように、項垂れる。

「………クリティカルヒット」

ダイイングメッセージのように、僕の名前を指で机に書くこなつの頭を、丸めたノートではたく。

「休憩終了ー」
「うぅ………」

顔を起こしたこなつは、両手で頬を覆う。

しばらく静止したあと、「〜〜〜〜〜っ!」と声にならない声を上げて、身悶えしているように足をバタつかせる。

…情緒不安定か。そんなときめきポイント、どこにあったんだ。

「私…やっぱりズボラ治さなくていいや」
「どうしたらその結論に至るんだよ」

どことなく嬉しそうに微笑むこなつは今日も可愛い…とは、やっぱり口が裂けても本人には言わない。けど…口が裂ける前には言ってみたいかもな。 


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