ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「ほらこのドレス、エスター様の髪色に合わせて作らせたんですの!」

 エスターに気がある第3王女マリアナは、二階のサロンに渋々現れたエスターの腕を取ると、隣に座らせてずっと話をしていた。

「……銀髪なんて僕だけじゃないよね、オスカーも父も銀髪だ」

そう冷たく言うとマリアナの腕をそっと払いのけ、用意されているお茶を飲み始めた。

「でも見てください! これ、エスター様の瞳の色と同じ色の糸で刺繍が入れてあるの、全体に入っていてまるで、貴方に抱きしめられているようだわ」

「……オスカーの瞳も僕と同じ青だけど」

そうエスターが更に冷たい物言いをすれば、さすがにマリアナ王女は言葉を詰まらせた。

「それに、今日はエリーゼ王女様もミリアリア王女様も貴女とお揃いのドレスだ、という事は僕は3人を抱きしめているのかな」

「…………… !」


 エスターは飲み干したカップをテーブルに置くと、立ち上がりバルコニーへ出た。


 マリアナ王女はキッと鋭い視線を姉達に送っている。何故お揃いのドレスを着ているのかと怒っているようだ。

オスカーはエリーゼ王女とミリアリア王女の間に座りその様子を見ていた。

「マリアナ、私はオスカー様のお色を着たのですわ」
「……私は用意された物を着たまでです」

 気の強いエリーゼ王女とマリアナ王女は睨み合い、ミリアリア王女は知らぬ顔をしてお菓子を口にしていた。 


 円形に迫り出したバルコニーからは、昨日魔獣が出た庭園が一望でき、その向こうにある細道と木々の向こうの物干場まで見渡す事が出来た。

エスターが眺めていると、二人のメイドが物干場から歩いて城内に戻っていくのが見えた。

メイド帽の間から見える髪色は、黒髪と金髪だった。( ……違うな……)

今度は物干場の方へ目を向ける、まだ一人メイドがいた。カゴの中の物を干し終わったようで木陰に入り座ると、頭に被っていたメイド帽を外した。


( …… 茶色い髪だ……)


 エスターはその子に眼を集中させた。
竜獣人は身体能力が極めて高く、容姿は美しく強靭な身体を持つ。とりわけ眼が良く、視界に入ってさえいればそれに集中し、その物を詳細に見ることが出来た。

( ……あの子……)
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