ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「……じゃあ行ってくる」

 玄関先でエスターは、いつもの様にシャーロットを抱き寄せ唇を重ねようとする、が彼女に横を向かれてしまい頬に口づける事になった。

「どうして?」

朝から凄艶な目を向けてくるエスターに、シャーロットは恥ずかしそうに小声で告げた。

「皆見てるもの、それにエスター……キス長いし……」

「みんなって……」

 そこには主人の出発を見送るジェラルド達四人が並んでいた。

「皆、ちょっと目を閉じていて」
四人はハイハイと言って目を閉じた。

「コレならいいよね」
青い瞳に欲を宿し、甘く見つめるとシャーロットの顎に指をかけ唇を重ねた。

「……んっ……はっ……」

 エスターはいつもの様に熱いキスをして、シャーロットの唇から漏れる甘い声を聞きながら思っていた。
( キスが長くなるのはシャーロットのせいなんだけどな……こんな声聞かされたらすぐに止められる訳ない )

「んっ……んっ……あ」

パパンッ!

「…………!」

 手を叩く音がした拍子に二人の唇が離れた。見計った様にドロシーが、シャーロットを自分の方へと引き寄せる。

「はい、終わりです。エスター様、続きはお帰りになってからになさって下さい。コレではいつまで経っても出発出来ないでしょう?」

 ドロシーにシャーロットを取られてしまい、エスターはションボリとして出かけて行った。
そんな彼に皆は柔かに笑って手を振り送り出す。
これが最近恒例となった、エスターが仕事へと向かう朝のやり取りだ。





 エスターにとって魔獣討伐は簡単な仕事だった。ただ、その後の仕事が大変なのだ。魔獣が出た場所、被害状況、魔獣の種類またそれをどう討伐したか、誰が何をどうしたのかを書類に書き残さねばならない。
(今後の為だと父ヴィクトールから言われているが正直面倒だ……)
< 100 / 145 >

この作品をシェア

pagetop