ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

本当にカッコよかった

バルコニーへと出たエスターは、庭を眺めていたが忽然と消えた。

 王女達には消えたように見えただろう、だがオスカーには、エスターが何かを見つけバルコニーを蹴り上げて、ある所へ一目散に飛んでいくのが見えていた。

 エスターの側に行こうとバルコニーへ向かったマリアナ王女は目を白黒させている。まぁ、突然エスターが目の前から消えたのだからそうなるだろう。

 アイツはどこへ行ったんだ? そう思いオスカーもバルコニーへ出て見ると、弟は物干場でメイドに声を掛けている。

…… 茶色の髪だ……
まさか、傷を負ったあのメイドなのか?


しかし……凄い跳躍だな……

 俺でもあの場所まで一瞬で飛ぶのは難しいな、と考えていると、横でマリアナ王女がハンカチを口に咥えワナワナと震えている。

…… この王女、あれが見えているのか?
まさか⁈

「あのキラキラしているのはエスター様ですわっ‼︎ なぜあんな下々の者の所へいらっしゃっるのっ‼︎ 」

「下々って……」
さすがにハッキリ見えている訳ではないようだ。

「すぐ呼び戻さなければ! エスター様が汚れてしまうわっ!」

「汚れる……?」

 マリアナ王女は近くに居た近衛兵にエスターを連れ戻す様に指示を出すと、自らも迎えに行くとサロンを出て行ってしまった。

「弟も厄介な相手に好かれたものだ……」
 
いや、兄弟揃って……だな、とオスカーは晴れた空を見上げて思うのだった。
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