ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
おかしくなった状況を直す様に咳払いをしたエスターは、話を仕切り直した。
「……とにかく、シャーロット令嬢あなたはやってはいけない事をしたんだ」
扉の方に向かって「入って来てくれ」と言うと、扉が開き、騎士ノアが入ってきた。
「ノア……あなた、何でここにいるの?」
「叔父さんに頼まれて君を迎えに来たんだよ」
「迎え?」
「叔父さんは君や僕の代わりに罪を償うと騎士団本部に向かわれたんだ」
「私の代わり……罪?」
「『時戻り草』は一般に禁止されている物ではないよ、ただ、やり方がよくなかった。君は叔父さんにも暗示をかけていたんだろう? この家に来れるように」
ノアは悲しそうな目でシャーロット令嬢を見る。
「シャーロット、君は俺も利用したのか?」
悲しみと諦めの入り混じる声で従姉妹に問いかけた。
「……そうかもしれないわね」
「どうして……」
「あなたが騎士だったからよ、それとその赤い髪の色ね」
「髪の色?」
「騎士ならこの家の者達も疑うことはないでしょう? それと、あなたのキレイな赤い色の髪。見ようとしなくとも自然と目に入るわ。あの日、どうしてシャルは一つだけ入っていた赤い薔薇の形の砂糖を選んだかわかる? 薔薇の形の物は他の色もあったでしょう? それでも無意識のうちに彼女は選んだのよ、印象に残っていたあなたの髪の色をね」
ふふ、とシャーロット令嬢は遠い目をして笑う。
「でも、あなたがいる時に砂糖を勧めたのは偶然に過ぎないわ、まぁ、その日でなくともいつかは使ったでしょうけど?」
「シャーロット様を最初から狙ったのか?」
「そうよ、エスター様が使うわけないじゃない。砂糖を入れるところなんて、私は一度も見た事がないもの」
「シャーロットなんて事を……君はそんな事をする様な人ではなかっただろう? いつだって穏やかで、ずっとマリアナ王女様を支えてきた素晴らしい人じゃないか」
「私が? マリアナ王女様を……? 支えてなんかいない! 押さえつけられていたのよ! 私だって彼を好きだったのに、あの人はそれを知っていながら、いつだって見せつけて、私からは声をかけることさえ許されていなかったのよ……」
ぐっとドレスを握りしめる彼女の肩や手は、小さく震えていた。
「だから王女様が居なくなって、やっと自由に気持ちを伝える事が出来ると思っていたのに、エスター様は結婚してしまった……だから……どうして……私じゃダメなの? シャーロットなのに……同じ名前なのに……ドレスだって入らなかった。何で?」
どうして?なぜ? とシャーロット令嬢はぼろぼろと泣きながらエスターに尋ねていた。
「それは君が『僕のシャーロット』ではないからだ」
その言葉を聞いてさらに泣き崩れる彼女を見ても、エスターは表情を崩す事はなかった。
侍女はシャーロット令嬢を抱きしめていた。
「ごめんなさい、私が悪かったのよ」と母親の様に背中を摩りながら……
ノアと侍女がシャーロット令嬢を抱き抱えて連れて行こうとしたが泣きじゃくる彼女を動かせず、ダンも一緒になって抱え何とか馬車に乗せた。
出発の間際、侍女は皆に向けて深々と頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。全ては私が企てた事、お嬢様は私に唆されただけでございます。全ての罰は私が受けます」
シャーロット令嬢と侍女は、ノアと共に侯爵邸へと帰って行った。
「……とにかく、シャーロット令嬢あなたはやってはいけない事をしたんだ」
扉の方に向かって「入って来てくれ」と言うと、扉が開き、騎士ノアが入ってきた。
「ノア……あなた、何でここにいるの?」
「叔父さんに頼まれて君を迎えに来たんだよ」
「迎え?」
「叔父さんは君や僕の代わりに罪を償うと騎士団本部に向かわれたんだ」
「私の代わり……罪?」
「『時戻り草』は一般に禁止されている物ではないよ、ただ、やり方がよくなかった。君は叔父さんにも暗示をかけていたんだろう? この家に来れるように」
ノアは悲しそうな目でシャーロット令嬢を見る。
「シャーロット、君は俺も利用したのか?」
悲しみと諦めの入り混じる声で従姉妹に問いかけた。
「……そうかもしれないわね」
「どうして……」
「あなたが騎士だったからよ、それとその赤い髪の色ね」
「髪の色?」
「騎士ならこの家の者達も疑うことはないでしょう? それと、あなたのキレイな赤い色の髪。見ようとしなくとも自然と目に入るわ。あの日、どうしてシャルは一つだけ入っていた赤い薔薇の形の砂糖を選んだかわかる? 薔薇の形の物は他の色もあったでしょう? それでも無意識のうちに彼女は選んだのよ、印象に残っていたあなたの髪の色をね」
ふふ、とシャーロット令嬢は遠い目をして笑う。
「でも、あなたがいる時に砂糖を勧めたのは偶然に過ぎないわ、まぁ、その日でなくともいつかは使ったでしょうけど?」
「シャーロット様を最初から狙ったのか?」
「そうよ、エスター様が使うわけないじゃない。砂糖を入れるところなんて、私は一度も見た事がないもの」
「シャーロットなんて事を……君はそんな事をする様な人ではなかっただろう? いつだって穏やかで、ずっとマリアナ王女様を支えてきた素晴らしい人じゃないか」
「私が? マリアナ王女様を……? 支えてなんかいない! 押さえつけられていたのよ! 私だって彼を好きだったのに、あの人はそれを知っていながら、いつだって見せつけて、私からは声をかけることさえ許されていなかったのよ……」
ぐっとドレスを握りしめる彼女の肩や手は、小さく震えていた。
「だから王女様が居なくなって、やっと自由に気持ちを伝える事が出来ると思っていたのに、エスター様は結婚してしまった……だから……どうして……私じゃダメなの? シャーロットなのに……同じ名前なのに……ドレスだって入らなかった。何で?」
どうして?なぜ? とシャーロット令嬢はぼろぼろと泣きながらエスターに尋ねていた。
「それは君が『僕のシャーロット』ではないからだ」
その言葉を聞いてさらに泣き崩れる彼女を見ても、エスターは表情を崩す事はなかった。
侍女はシャーロット令嬢を抱きしめていた。
「ごめんなさい、私が悪かったのよ」と母親の様に背中を摩りながら……
ノアと侍女がシャーロット令嬢を抱き抱えて連れて行こうとしたが泣きじゃくる彼女を動かせず、ダンも一緒になって抱え何とか馬車に乗せた。
出発の間際、侍女は皆に向けて深々と頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。全ては私が企てた事、お嬢様は私に唆されただけでございます。全ての罰は私が受けます」
シャーロット令嬢と侍女は、ノアと共に侯爵邸へと帰って行った。