ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
エスターの恋
「エスターさーまー‼︎‼︎ 」
庭園からマリアナ王女の甲高い声が聞こえる。… 残念ながら彼女の声は、俺たち竜獣人には耳障りな音域だった。
オスカーは庭園の端まで行ったマリアナ王女を上から見届けると、サロンへと戻った。
あの様子なら、すぐにエスターも連れ戻されてくるだろう。
しかし何故あんなに、弟はメイドのあの子にこだわるのだろうか……?そんなに美人だったか⁈
俺は席に戻った。心なしか椅子がエリーゼ王女に近づいているようだ。
「……マリアナは、自身がエスター様に好かれていないこと、分かっていないのね」
王女はゆっくりとした仕草でカップを持ち、紅茶を一口飲むとそう言った。
「そう思われますか?」
( 意外だな……少しは人の気持ちが分かるのか )
「ええ、私あの子より大人ですもの」
ふふふ、と笑いながら俺に紅茶を飲むように勧めて来る。どうやらまた何か入れたらしい。紅茶に混じる甘ったるい匂い……懲りない人だ。
( ーーーどうせ媚薬か何かその類だろう、俺には効かないのに ……)
椅子に腰掛け、その何かが入っているカップを手に取ろうとすると、ミリアリア王女が
「まぁ、オスカー様のお茶はすっかり冷めてしまいましたわね、取り替えてもらいましょう」と、侍女を呼び全てを下げさせた。
「…………っ!」
エリーゼ王女はミリアリア王女に鋭い視線を送っているが、彼女は気にも止めていないようだ。
どちらかと言えばミリアリア王女の方が好ましいが、彼女には想い人がいる事を知っている。
それに……
竜獣人には『花』と呼ぶただ一人の愛する人が存在する。……俺も最近、父から聞いたばかりだ。
成人の頃に必ず出会うその相手には、触れると体が反応するから分かると言っていた。
また、その人以外は愛する事はないのだと……
だから竜獣人は浮気しないだろう?なんて事を自慢げに言っていた。
エリーゼ王女もミリアリア王女も俺の『花』では無い。触られても何も感じないし、好意を持った事もない。
もちろんマリアナ王女も。( よかった……)
この『花』の事を、一つ年下のエスターはまだ知らない。俺からは話はしていない。俺が出会っていないんだ、アイツもまだ出会わないだろう。
しばらくすると、マリアナ王女の後ろからエスターがサロンへ戻って来た。
( なんだ?……エスターの瞳が薄っすら金色になっている⁈ )
「エスター、その目どうした?」
「目?」
「えっ、エスター様の目がどうかされましたのっ?」
嬉々としたマリアナ王女がエスターの顔を下から覗き込むと、エスターの目はスッと元の青い目に戻った。
彼女は、その青い目を見てポッと頬を赤らめ「やっぱりステキ!」と言いながら抱きつこうとして、エスターに逃げられていた。
そのまま夕方まで、王女達の話に付き合わされ俺達は帰る事も出来ず、サロンで無駄に過ごす事になった。
その間、エスターは何度もバルコニーの方へ目を向ける。
無意識なのだろうか……エスターは切なげに視線を送っている。
その様子を、横に座るマリアナ王女が歯痒そうに見ている事にも気づいていないようだ。
「マリアナ、何もしなければ良いけれど……」
呟くようにミリアリア王女が言った。
「誰に何をするのです?」
「……先程、エスター様が会われていた方に、何かを……です」
「まさか、ただ会っただけですよ⁈ 」
「それすら、あの子にとっては許せないのです」
「そんな事……本当に?」
「ええ、マリアナならやり兼ねません」
庭園からマリアナ王女の甲高い声が聞こえる。… 残念ながら彼女の声は、俺たち竜獣人には耳障りな音域だった。
オスカーは庭園の端まで行ったマリアナ王女を上から見届けると、サロンへと戻った。
あの様子なら、すぐにエスターも連れ戻されてくるだろう。
しかし何故あんなに、弟はメイドのあの子にこだわるのだろうか……?そんなに美人だったか⁈
俺は席に戻った。心なしか椅子がエリーゼ王女に近づいているようだ。
「……マリアナは、自身がエスター様に好かれていないこと、分かっていないのね」
王女はゆっくりとした仕草でカップを持ち、紅茶を一口飲むとそう言った。
「そう思われますか?」
( 意外だな……少しは人の気持ちが分かるのか )
「ええ、私あの子より大人ですもの」
ふふふ、と笑いながら俺に紅茶を飲むように勧めて来る。どうやらまた何か入れたらしい。紅茶に混じる甘ったるい匂い……懲りない人だ。
( ーーーどうせ媚薬か何かその類だろう、俺には効かないのに ……)
椅子に腰掛け、その何かが入っているカップを手に取ろうとすると、ミリアリア王女が
「まぁ、オスカー様のお茶はすっかり冷めてしまいましたわね、取り替えてもらいましょう」と、侍女を呼び全てを下げさせた。
「…………っ!」
エリーゼ王女はミリアリア王女に鋭い視線を送っているが、彼女は気にも止めていないようだ。
どちらかと言えばミリアリア王女の方が好ましいが、彼女には想い人がいる事を知っている。
それに……
竜獣人には『花』と呼ぶただ一人の愛する人が存在する。……俺も最近、父から聞いたばかりだ。
成人の頃に必ず出会うその相手には、触れると体が反応するから分かると言っていた。
また、その人以外は愛する事はないのだと……
だから竜獣人は浮気しないだろう?なんて事を自慢げに言っていた。
エリーゼ王女もミリアリア王女も俺の『花』では無い。触られても何も感じないし、好意を持った事もない。
もちろんマリアナ王女も。( よかった……)
この『花』の事を、一つ年下のエスターはまだ知らない。俺からは話はしていない。俺が出会っていないんだ、アイツもまだ出会わないだろう。
しばらくすると、マリアナ王女の後ろからエスターがサロンへ戻って来た。
( なんだ?……エスターの瞳が薄っすら金色になっている⁈ )
「エスター、その目どうした?」
「目?」
「えっ、エスター様の目がどうかされましたのっ?」
嬉々としたマリアナ王女がエスターの顔を下から覗き込むと、エスターの目はスッと元の青い目に戻った。
彼女は、その青い目を見てポッと頬を赤らめ「やっぱりステキ!」と言いながら抱きつこうとして、エスターに逃げられていた。
そのまま夕方まで、王女達の話に付き合わされ俺達は帰る事も出来ず、サロンで無駄に過ごす事になった。
その間、エスターは何度もバルコニーの方へ目を向ける。
無意識なのだろうか……エスターは切なげに視線を送っている。
その様子を、横に座るマリアナ王女が歯痒そうに見ている事にも気づいていないようだ。
「マリアナ、何もしなければ良いけれど……」
呟くようにミリアリア王女が言った。
「誰に何をするのです?」
「……先程、エスター様が会われていた方に、何かを……です」
「まさか、ただ会っただけですよ⁈ 」
「それすら、あの子にとっては許せないのです」
「そんな事……本当に?」
「ええ、マリアナならやり兼ねません」