ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
キャロンは生まれて初めて女性に赤面した。

 初めて会ったシャーロットは、幼い感じの格好をしていた。( 普段からこういう服なの?)
見た目より幼い服が、余計に妖艶さを増していたのだ。黄色いワンピースは胸の上部辺りから鎖骨までが白いレースで覆われていた。レース生地の見えそうで見えない胸の谷間、そこに小さなリボンが着いていて、目が自然とそこを見てしまう。( この服はもっと胸の小さな人が着るものよ!)
 キュッとくびれた細いウエストから広がるスカート。そこから見える艶めかしい細い足。
 幼い感じの服に合わせたのか、三つ編みされた髪の毛が、時間が経って少し崩れていて、妙な色気が増していた。

 蕩けた緑色の目が、提灯の明かりを受け潤んだように輝く。


 普通の女に見えたのに……
無意識にこれだけの色気を振り撒くなんて……


あの冷静なエスターがメロメロになる訳だ

それに、この巧みな指の動き……


「もうちょっと……触りたいなぁ……キャロンさん……」

白く細い指がキャロンへと伸ばされる。

 キャロンは首をブンブンと横に振り
「もう、無理です」と言うが、シャーロットは「じゃあ……あと一回だけ……ね?」と吐息混じりの声で甘く囁いてくる。


キャロンの耳と尻尾はピンっと伸びた。


( 酔っている……この人、ジュースで完全に酔っている⁉︎ どうしよう……飲ませたのは私。でもジュースだよ? 声を掛けたのも私。いや、あたしが声を掛けていなければ、危なかったから……。でも……無理、今はあたしが危ない! 何でこの人こんな感じる様な触り方するのっ! それにこんな風に熱っぽく見つめられたら……ヤバいよ私、見つめられてドキドキしたらダメ。恋愛対象は男ですから! ああ、早く誰でもいいから迎えの人来て!)

 キャロンは、シャーロットから向けられる甘い視線を逸らすように、バルコニー下の通りに目を落とす。
そこから見える場所に、さっきまで見えていたエスターは居なかった。
( 何処に行ったのよ⁈ )と見回す。

ちょうどその時
「誰かあっ!泥棒よ‼︎ 」と声が聞こえた。

 近くに、他の騎士の姿はない。
彼女を一人置いていくのは不安だが……


「すみません、シャーロット様。私は仕事をしてきます、あなたはここから動いてはダメですよ!」

一言告げると、キャロンはベランダから飛び下り、泥棒の後を追った。




「ああん……キャロンさん行っちゃったぁ……」

人混みを抜け、走り去るキャロンをシャーロットは名残惜しそうに見ていた。
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