ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「おっ、エスターくん上手くいったね、どら……うん、体温も上昇してるし、目も赤く宝石みたいに輝いてるね。へぇ、書いてあった事は本当だったんだな」

ジークの前に立つエスターの目は、赤く輝きを放っている。

「書いてあった事って?」
エスターは気になって、ジークに聞いた。


「魔獣術師だけに伝わる秘密の本があるのさ」
( 凄いな……この状態でも普通に話せるのか? 後で書き加えておこう)

「エスターくん、体は平気?」
「ああ……ちょっと熱いぐらいで何も問題ないよ」

エスターの言葉にジークは頷く。

「じゃあ始めよう。いいか、彼女が動けるようになるまで、ひと時も離れず体力を注ぎ込む。エスターくんは眠る事も出来ないし、その目を持続させるだけでかなりの体力を消耗するはずだ。でも相手は『花』だ、大丈夫だよ。そう書いてあったしね」

「分かった」

 エスターが、ベッドに横たわるシャーロットの横に座ると、サラはグウンと力を込めて治癒を施した。彼女の体を白い光が包み込む。






 サラとジークが部屋を出て行った。

 治癒魔法の白い光りが消えそうになり、エスターは急いでシャーロットに口づけた。

いつもと違う彼女の冷たい唇に、不安が胸をよぎる。


シャーロット……目覚めて……



……これでいいのか?

ただ重ねた唇から、どうやって体力を注ぐんだろう……

注ぐ……

 エスターは少し考えて、シャーロットの冷えた唇を舌先で開いて、ちょっと深いキスをした。

 いつもの癖で、体に触れようと動く手を、理性で抑えながらキスを続ける。


すぐに唇は温かくなってきた。ほんのりと頬にも赤みが差してきているようだ。


でもやっぱり……
熱を帯びている自分の手を、彼女の着ている寝間着の中にそっと差し込む。

シャーロットの体はまだ冷たかった。

……体は冷えたままだ……抱きしめた方がいいな


 そう判断したエスターは、キスをしながらパッと自分の着ていた服を脱ぎ捨てると、シャーロットの寝間着も取り払った。
彼女の冷たい体を抱き締めるようにして、熱を逃さないように上掛けを掛ける。

……シャーロットが目覚めるまでか……何日かキスを続けるのかな?
……ジークは体力を消耗するって言っていたけど、全くどうも無い。

それどころか、力がどんどん湧き出てくる感じがする


……確かジークは『口移し』と言っていた。
だったら……



……もう少し

ゆっくりと、シャーロットの体を手のひらで撫でるように触る。

すると、エスターが触れる場所から、彼女の体は温かみを増していった。


やっぱり……
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