ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
ドルモア伯爵
朝、いつもの様に洗濯場で働いていると、メイド長が申し訳なさそうに私を呼んだ。
……なんだろう、嫌な予感しかしない。
「シャーロットが悪い訳じゃ無いのよ、だからこうやってお給金も全額支払われるの。只、今日で城での仕事はお終い、宿舎も出て貰わないとならないの、急で悪いけど、家までの馬車はこちらから出してくれるそうだから」
凄く言いにくそうに、メイド長は突然の解雇を告げた。
「私は何かしてしまいましたか?」
「…… マリアナ王女様からの命令なの、あなた昨日エスター様にお会いしたんでしょう?」
「…… はい」
ああ、そうか…… マリアナ王女様がエスター様に御執心というのは誰もが知っている事だ。
その、エスター様と言葉を交わして( 頬にキスまでされて)しまった私が気に入らなかったということ…… 。
私はそのまま宿舎に戻り荷造りを済ませ、メイド仲間達に別れの挨拶をした。
皆は急な別れを惜しんでくれた、中々話が尽きない所にメイド長がやって来て、早く行かないといけないと、急かすように馬車に押し込まれてしまった。
少し早いが、男爵家に戻って大丈夫だろうか…… ちょっと不安だ。
そんな心配を他所に、叔父夫婦はよく帰って来た、お疲れ様と歓迎してくれた。
私が居なかったこの半年で何か変わったのだろうか、そう思っていた私は愚かなのだろう。
叔父達は私が城で働いた半年分のお金を受け取ると、ニンマリと気持ちの悪くなる笑顔を向けた。
「シャーロット、お前はドルモア伯爵の元へ来週にも行くことが決まっている」
「ドルモア伯爵……」
何のことやら分からず戸惑う私に、ソフィアが含み笑いをしながら教える。
「あなた、ドルモア伯爵のお嫁さんになるのよ、良かったわね!」
…… お嫁さん?
「どうして? そんな事」
「決まったことよ、あなたはもう17歳になるのだし、伯爵はまだ22歳とお若いのよ、とてもいいお話でしょう? ふふふ…… それにもうたくさんお金も貰ってしまったのよ」
叔母は目を細め、口角を上げる。真っ赤な唇が弧を描く様は、何故か怖くて仕方がなかった。
「今日は休んでいいわ、けれど明日から伯爵が迎えに来るその日までは、今まで通りメイドとして働くのよ」
「…… はい」
半年前に出た屋根裏部屋は、少しだけ埃っぽかったが何も変わってはいない。一つだけある窓を開けて空気を入れ替える。
「…… はぁ」
( 帰るなり嫁に出されるなんて……それもお金をたくさん貰ったとあんなに喜ぶなんて…… まるで売られてしまったみたい……いや、本当に売られたのかも)
「……はぁ」
ため息しか出ない。
嫁……。
知らない人の元へ私はお嫁に行かなければならない……
見上げる窓から、雲ひとつない青い空が見える。
綺麗な青……あの人の瞳と同じ……
青い瞳の……
エスター・レイナルド様
彼のことを思うと鼓動が高まる
「エスター様……」
私を助けてくれた人……
出来ることなら、もう一度会いたい。
会って、あの時助けてくれてありがとうございました、とお礼を言いたい。
もう…… 二度と会うことはないだろうな……
…… 会えないのか……
そう考えると胸の奥がズキリと痛んだ。
……なんだろう、嫌な予感しかしない。
「シャーロットが悪い訳じゃ無いのよ、だからこうやってお給金も全額支払われるの。只、今日で城での仕事はお終い、宿舎も出て貰わないとならないの、急で悪いけど、家までの馬車はこちらから出してくれるそうだから」
凄く言いにくそうに、メイド長は突然の解雇を告げた。
「私は何かしてしまいましたか?」
「…… マリアナ王女様からの命令なの、あなた昨日エスター様にお会いしたんでしょう?」
「…… はい」
ああ、そうか…… マリアナ王女様がエスター様に御執心というのは誰もが知っている事だ。
その、エスター様と言葉を交わして( 頬にキスまでされて)しまった私が気に入らなかったということ…… 。
私はそのまま宿舎に戻り荷造りを済ませ、メイド仲間達に別れの挨拶をした。
皆は急な別れを惜しんでくれた、中々話が尽きない所にメイド長がやって来て、早く行かないといけないと、急かすように馬車に押し込まれてしまった。
少し早いが、男爵家に戻って大丈夫だろうか…… ちょっと不安だ。
そんな心配を他所に、叔父夫婦はよく帰って来た、お疲れ様と歓迎してくれた。
私が居なかったこの半年で何か変わったのだろうか、そう思っていた私は愚かなのだろう。
叔父達は私が城で働いた半年分のお金を受け取ると、ニンマリと気持ちの悪くなる笑顔を向けた。
「シャーロット、お前はドルモア伯爵の元へ来週にも行くことが決まっている」
「ドルモア伯爵……」
何のことやら分からず戸惑う私に、ソフィアが含み笑いをしながら教える。
「あなた、ドルモア伯爵のお嫁さんになるのよ、良かったわね!」
…… お嫁さん?
「どうして? そんな事」
「決まったことよ、あなたはもう17歳になるのだし、伯爵はまだ22歳とお若いのよ、とてもいいお話でしょう? ふふふ…… それにもうたくさんお金も貰ってしまったのよ」
叔母は目を細め、口角を上げる。真っ赤な唇が弧を描く様は、何故か怖くて仕方がなかった。
「今日は休んでいいわ、けれど明日から伯爵が迎えに来るその日までは、今まで通りメイドとして働くのよ」
「…… はい」
半年前に出た屋根裏部屋は、少しだけ埃っぽかったが何も変わってはいない。一つだけある窓を開けて空気を入れ替える。
「…… はぁ」
( 帰るなり嫁に出されるなんて……それもお金をたくさん貰ったとあんなに喜ぶなんて…… まるで売られてしまったみたい……いや、本当に売られたのかも)
「……はぁ」
ため息しか出ない。
嫁……。
知らない人の元へ私はお嫁に行かなければならない……
見上げる窓から、雲ひとつない青い空が見える。
綺麗な青……あの人の瞳と同じ……
青い瞳の……
エスター・レイナルド様
彼のことを思うと鼓動が高まる
「エスター様……」
私を助けてくれた人……
出来ることなら、もう一度会いたい。
会って、あの時助けてくれてありがとうございました、とお礼を言いたい。
もう…… 二度と会うことはないだろうな……
…… 会えないのか……
そう考えると胸の奥がズキリと痛んだ。