ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

印をつけたのは

部屋へと戻った私は暫くの間、壁に掛けたドレスを眺めていた。
青と銀の糸で施された美しい刺繍。それを見ていると、何故だろう……エスター様を思い出す。

 物干場で会って以降、私の心の中にはずっと彼がいた。彼に…… 会いたいと思う自分が居る。
たった一度( 助けて貰った時も入れたら二度かしら?) 会ったあの時に、もしかして私は……恋をしてしまったのだろうか……。

……いや、 多分そう……私はあの美しい人を、好きになってしまっている。

けれど……好き…… だとしても、どうにもならない。

 彼は王族と並ぶ権威ある公爵家の御令息。

私なんてエスター様のことを思うことすら烏滸がましい。

それに、明日にはドルモア伯爵様が迎えに来られるのだ。

 私は……結婚しなければならないのだから……
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