ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
翌日、ディーバン男爵家の玄関先に二頭立ての豪華な馬車が止まった。

 私は昨日届いたばかりのドレスを着て、エントランスに並ぶソフィアの横に立たされた。ソフィアもまた、届いたばかりの黄金色のドレスを身に纏っている。

 豪華な馬車から、黄金の髪に切長の赤い瞳の大柄で立派な体格の青年が降りて来た。

「ようこそいらっしゃいました」
叔父が満面の笑みを浮かべ、伯爵に挨拶を述べる。

「やぁ、ディーバン男爵殿、予定より少し遅れてしまったかな?」

 低く響き渡る様な声で柔かに話をするその人が、私がお嫁に行くドルモア伯爵の様だ。

「いえ、全く問題ありません、本来ならこちらから出向かなくてはならないものを……」
叔父は申し訳なさそうなフリをして頭を下げている。

「ははっ、気にする事はない。私の嫁となるのだから迎えに来るのは当然だろう」

ドルモア伯爵は気さくに叔父の肩を叩くと私達の前に立った。

「私がレオン・ドルモアだ。……嫁となる娘はどちらかな?」

 レオン様はソフィアと私に視線を移す。

 叔母が私を手で指し示して
「この子がシャーロットでございます」と伝えた。


 私はドレスの両端を持ち挨拶をする。

「シャーロット・ディーバンでございます」

 ふむ、とレオン様は私の前に立ち、屈んで顔を覗き込んだ。
赤い目で探る様に見つめると、今度はクンクンと匂いを嗅ぐ。

「……あの……何か」
(…… 私、もしかして臭うのかしら⁉︎ )

 すると、赤い瞳がふっと細められ、レオン様は首を横に振った。

「竜獣人の印付きはとてもじゃないが、嫁にもらう勇気はないよ」

( …… えっ? )

「どっ、どういう事ですか⁈ 」
 叔父は慌てたようにレオン様に聞いている。

「私はね……あなた方は知っているだろうが、獅子獣人だ。だから分かる……シャーロット嬢には竜獣人の印が着いている。いや、困ったね! 結婚は無かったことにするかなぁ……私としてはお金を返して貰えば問題はないけれど……」

 そう言って微笑むレオン様に、叔父は冷や汗をかき苦笑いをしている。

( あの顔は……お金はもう使ってしまったのだろう )

それを聞いていた叔母が、カッとなり私を怒鳴りつけた。

「お前! どこの竜獣人に印を付けられたのよっ‼︎ 城で何をしていたんだっ!」

「そんな……私、印なんて知りません」

「口答えするんじゃない! 体に傷まで付けておいてーーこの役立たずめっ‼︎ 」

叔母はこちらの話など聞こうともせず、感情に任せ私の顔を目掛けて手を振り上げる。
叩かれる、そう思い目をギュッと閉じた。
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