ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
ーーが、



「僕です、印を付けたのは」

 その声にハッと目を開けると、そこには会いたかったエスター様が私を庇うように立っていた。
 
 叔母は振り上げた手はそのままに、突然現れた彼に驚いて固まっていた。叔父達も同じく唖然としている。レオン様だけが穏やかな顔で笑みを浮かべていた。



「……エスター様?」
「うん、そうだよ、シャーロット」

 彼は私の手を持つと指先に軽く口付ける。
エスター様と私は言葉を交わすでもなく、ただ見つめ合っていた。
鼓動が高まり、体が熱くなっていく感覚がする。

…… あの時と同じ……

 どうしてか、エスター様の瞳に見つめられると、何も考えられなくなる。

…… ううん、違う……この人の事しか考えられなくなるのだ

「シャーロット……」

彼が甘やかな声で私の名前を呼ぶ……

見つめ合う彼の瞳が段々と……


「ーーんんっ!エスター、ちょっといいかな」

レオン様はもう見ていられないと言わんばかりに声を掛けてきた。

その声に二人共にハッとして

…… そうだった、周りには人が居たんだ……

「そういうのは後で好きなだけやってくれ、今はそこで呆然とする彼等に、説明をしなければならないだろう? 私も早く嫁を連れて帰りたい」

( …… 嫁? 私……)



「ああ、そうでした。僕から説明します」

 エスター様はまず、私が魔獣に襲われてしまったことを自分の不注意のせいだと叔父達に謝罪した。
そして、竜獣人には『花』と呼ぶ魂が惹かれあい、生涯ただ一人の愛する相手がいる。その『花』が私だったという事。( …………!)
『印』は知らぬ間に付けてしまったと、もっと早く来る筈だったが、訳あって遅くなってしまった。

 レオン・ドルモア伯爵とは幼い頃からの知り合いで、今日は頼んで一緒に来たのだと話た。
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