ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「…………話は終わった様なので僕はこれで失礼します」
今からシャーロットの元へ向かおうと、エスターは急ぐ様に挨拶を言って立ち去ろうとする。それをマリアナ王女は引き止める様に声を掛けた。
「そういえば、国境に魔獣が出たそうですわね、エスター様も直ぐに討伐に出られるのではなくて?」
「……国境に魔獣?」
そんな事は聞いていない。と、エスターはマリアナ王女を見た。
いつもと違う表情を見せるエスターにマリアナ王女は嬉しさを隠せない。
「あら、たった今入った情報ですわ………残念ですが暫くは会えませんわね、私にも……ディーバンの娘にも」
ふふふと愉しげに笑うと、マリアナ王女は満足したのだろう、ようやく侍女を引き連れエスターの前から立ち去った。
エスターは王女の話した通り、それから直ぐに魔獣討伐へと向かう事となった。
魔獣の出た国境まで彼は単騎で向い、( 他の騎士達は彼の速さに追い付けなかった) 既に出発していたオスカーより先に現場へ到着した。
シャーロットに会いたいエスターの活躍で、あっという間に討伐は済んだ。
彼は帰るなりシャーロットの元へと向かおうとしたのだが
「今は行かない方がいい」
レイナルド公爵がエスターを止めた。
「何故ですか⁈ 」
「マリアナ王女の監視がお前に付いている、気づいていないのか?」
「そんなもの……」
もちろん気づいているが、大した事はない。振り切るなど簡単な事だ、とエスターは思っていた。
それよりも会いたい、もう何日も姿すら見ていない。
「まぁ待て、後一日まてばレオンがディーバン男爵家に行く。お前もその時一緒に行けば良い。それに明日ドレスが届けられるからな」
「ドレス?」
「ああ、男爵夫人が嫁に出す為ドレスを頼んでいたから、ちょっと手を入れさせて貰ったよ。シャーロット嬢のドレスにはお前の色を入れておいた、楽しみにしていろ」
「僕の……色……」
会えるまで後一日……一日も待たなければならないのか、エスターの顔からは落胆の色が隠せない。
エスターの落胆する顔を見て……だろうな、と父ヴィクトールは思う。
自分は出会って直ぐに連れ去りひと月以上も今の妻であるローズを誰にも会わせず手離さなかった。
…… 過去を思い出して一人ニヤける父。
まぁ、それを思えば息子は理性的だな……と考えながら、ヴィクトールはエスターに話を続けた。
「それから、城に現れた魔獣の事にどうやら王女達が関係している事が分かった」
「王女達が?」
「そうだ、三人の誰かが『魔獣術師』と関係を持っている様だ、今オスカー達が調べているが相手が王女達だからな、ちと厄介だ」
「王女が何故、危険な魔獣を城へと入れるのですか?」
あんな事が無ければシャーロットは傷を負わずに済んだのに……そうエスターは思ったが、あの事が無ければ未だに会えてはいなかったのかも知れない……そう考えると複雑な気持ちになった。
「魔獣を退治出来たのは、あの場所ではお前たちだけだ。大方、退治したお前たちに何だかんだと婚約を迫るつもりだったのだろう、現にそうなっていただろう? 王は、竜獣人には『花』がいる事を知っているのだがな、王妃と王女達には話していない。それが厄介事の要因でもあるのだが……」
「マリアナ王女には僕が話ました」
「……そうか、うむ……それが吉と出れば良いが」
「どういうことですか?」
「既にマリアナ王女の心はエスター、お前に向いている。それもかなり情熱的にだ。それが突然現れた『花』に奪われたのだ、女の嫉妬とは怖いものだぞ? 嫉妬からくる怒りのその矛先は大概は同性に向くものだ」
「どうして?」
「その女さえ居なければ、自分を愛すると思うのでは無いのか?私は男だから分からんが……」
「まさか……」
あの時の父の言葉を、僕はそれほど大事に考えてはいなかった。
今からシャーロットの元へ向かおうと、エスターは急ぐ様に挨拶を言って立ち去ろうとする。それをマリアナ王女は引き止める様に声を掛けた。
「そういえば、国境に魔獣が出たそうですわね、エスター様も直ぐに討伐に出られるのではなくて?」
「……国境に魔獣?」
そんな事は聞いていない。と、エスターはマリアナ王女を見た。
いつもと違う表情を見せるエスターにマリアナ王女は嬉しさを隠せない。
「あら、たった今入った情報ですわ………残念ですが暫くは会えませんわね、私にも……ディーバンの娘にも」
ふふふと愉しげに笑うと、マリアナ王女は満足したのだろう、ようやく侍女を引き連れエスターの前から立ち去った。
エスターは王女の話した通り、それから直ぐに魔獣討伐へと向かう事となった。
魔獣の出た国境まで彼は単騎で向い、( 他の騎士達は彼の速さに追い付けなかった) 既に出発していたオスカーより先に現場へ到着した。
シャーロットに会いたいエスターの活躍で、あっという間に討伐は済んだ。
彼は帰るなりシャーロットの元へと向かおうとしたのだが
「今は行かない方がいい」
レイナルド公爵がエスターを止めた。
「何故ですか⁈ 」
「マリアナ王女の監視がお前に付いている、気づいていないのか?」
「そんなもの……」
もちろん気づいているが、大した事はない。振り切るなど簡単な事だ、とエスターは思っていた。
それよりも会いたい、もう何日も姿すら見ていない。
「まぁ待て、後一日まてばレオンがディーバン男爵家に行く。お前もその時一緒に行けば良い。それに明日ドレスが届けられるからな」
「ドレス?」
「ああ、男爵夫人が嫁に出す為ドレスを頼んでいたから、ちょっと手を入れさせて貰ったよ。シャーロット嬢のドレスにはお前の色を入れておいた、楽しみにしていろ」
「僕の……色……」
会えるまで後一日……一日も待たなければならないのか、エスターの顔からは落胆の色が隠せない。
エスターの落胆する顔を見て……だろうな、と父ヴィクトールは思う。
自分は出会って直ぐに連れ去りひと月以上も今の妻であるローズを誰にも会わせず手離さなかった。
…… 過去を思い出して一人ニヤける父。
まぁ、それを思えば息子は理性的だな……と考えながら、ヴィクトールはエスターに話を続けた。
「それから、城に現れた魔獣の事にどうやら王女達が関係している事が分かった」
「王女達が?」
「そうだ、三人の誰かが『魔獣術師』と関係を持っている様だ、今オスカー達が調べているが相手が王女達だからな、ちと厄介だ」
「王女が何故、危険な魔獣を城へと入れるのですか?」
あんな事が無ければシャーロットは傷を負わずに済んだのに……そうエスターは思ったが、あの事が無ければ未だに会えてはいなかったのかも知れない……そう考えると複雑な気持ちになった。
「魔獣を退治出来たのは、あの場所ではお前たちだけだ。大方、退治したお前たちに何だかんだと婚約を迫るつもりだったのだろう、現にそうなっていただろう? 王は、竜獣人には『花』がいる事を知っているのだがな、王妃と王女達には話していない。それが厄介事の要因でもあるのだが……」
「マリアナ王女には僕が話ました」
「……そうか、うむ……それが吉と出れば良いが」
「どういうことですか?」
「既にマリアナ王女の心はエスター、お前に向いている。それもかなり情熱的にだ。それが突然現れた『花』に奪われたのだ、女の嫉妬とは怖いものだぞ? 嫉妬からくる怒りのその矛先は大概は同性に向くものだ」
「どうして?」
「その女さえ居なければ、自分を愛すると思うのでは無いのか?私は男だから分からんが……」
「まさか……」
あの時の父の言葉を、僕はそれほど大事に考えてはいなかった。