ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「…………ごめん……シャーロット」

横にいたエスターはほんの少し体を離した。

「浮気じゃないから、仕方なかったんだ、嫌だったけど、そうしないとサラに君を診せる事は出来ないと脅されて……」

「はい、あの……そんなに謝らなくても」
( 謝られると余計に気になっちゃう……)

「でも、僕……」

「はい、はーい!エスター令息そこまでで一旦終わってくださらない?私もね暇じゃないのよ? 明日も朝早くから仕事があるの、だからサッサと治療させて頂戴」

後ろにいたサラ様が言った。

 エスターは執事が持ってきた上着をとりあえず着ると、私とサラ様を客間へと通した。

 部屋にはダブルサイズのベッドが置いてあり、サラ様が私にそこに服を脱いで横になる様にと言う。

「……あの、エスター」
「もう一度言って」
「えっ?」
「名前」
「エスター……?」
「はい」
エスターは手を握り、嬉しそうに私を見つめている。

「服を脱ぎたいのです」
「うん、脱がせてあげるよ」

エスターの瞳がキラリンと妖しく輝いた。
彼は迷う事なくドレスに付いているボタンに手をかける。

「ちょ、ちょっと待って!」

ぺチッと彼の頭にサラ様の平手打ちが入った。

「治療するからエスター令息は部屋から出なさい! 乙女の裸を見るつもりなの⁈ 」
「はい」
「…………あなた、たった一週間で変わってしまったのね」

 客間から出て行こうとしないエスターに、サラ様はレイナルド家の執事を呼び、連れて出る様に言った。

「3時間だけ待っていなさい!」
「無理だ! せめて1時間にしてください!」
「それこそ無理よ、傷がほとんどなくなる様にするから、じゃないと困るのはあなたでしょう⁈ 」

 サラ様はエスターの耳元に何かを話す。
それを聞いた彼は、私をチラリと見て何故か照れていた。

「はい、分かりました3時間待ちます」

この様な私にはよく分からないやり取りがなされた後、エスターは執事に引きずられる様に部屋を出て行った。
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