ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
……シャーロットに今日は会えない。
サラが、一日会ってはいけないと僕に言った。


二ヶ月も片時も離れずに過ごしていたのに……。

……耐えられない。

シャーロット、君は平気なの?

「シャーロット……」

そっと部屋を出ようとした僕の服が引っ張られた。

「エスター、何処へ行こうとしてるんだよ」
「……ちょっと……僕の部屋へ」
「お前の部屋は、お前達が壊しただろう⁈ 」

オスカーに止められて、仕方なく椅子に腰掛ける。

 昨日、父上が出てくる様に声を掛けて来て、僕は扉ごと「邪魔をするな!」と蹴り上げた。『花』と出会う事で力が増すのは身を持って分かっていたが、『花』と結ばれた事で更に何倍も力が増すとは知らなかった。あの父上を吹っ飛ばす程強くなっているとは……自分でも驚いている。

結局、父上と争っている間に、僕のシャーロットは母上とカミラに連れ出されてしまった。
それで余計に苛立った僕と父上が争いをした結果……今、僕の部屋は住める状況では無くなっている。

僕達の甘い思い出の詰まった部屋は、見るも無惨な状態だ。

そして今日は彼女と会う事を禁止され、僕が会いに行かない様に、オスカーに監視されていた。

 今の僕ならオスカーを振り切ることは簡単だが、それをしたら更に会えなくなりそうだ。

我慢するしかない。

シャーロットがどの部屋に居るかも教えてくれない……が、僕は分かっている。
感じるんだ……。だから我慢する。


オスカーは呆れたように僕を見ていた。

「エスター、お前さ彼女に『結婚しよう』とちゃんと伝えているのか?」
「何で? 今更」
「いや、大事なことだろ?」

そうか……好きだとか愛してるは毎日の様に伝えたけど……


 僕とシャーロットは既に婚約をしている。僕達が部屋に籠っている間に、父が手続きを済ませてくれていた。
直ぐに結婚したいけれど、この国の貴族は婚約をして更に三ヶ月過ぎないと結婚出来ない決まりになっていた。


「結婚、言った……ん? ディーバン男爵には婚姻させてと言ったけど……」
「うわーっ、それでいいのかよ⁈ 」
「……後でちゃんと言う。彼女も分かってくれる筈だ。オスカーも『花』に出会えばわかるよ、とにかく余裕なんてなくなるんだ」
「……そういうものか?」
「ああ、そうだよ」

ふうん、と素っ気なく言ったオスカーの顔は、少し羨ましそうにしている様に見えた。


「ああ、そうだ。明日から沿岸の魔獣討伐に行くからな」
「え、僕も?」
「当たり前だろ、お前二ヶ月も休んでるんだぞ、獣人の蜜月休暇は大体、ひと月なんだよ。竜獣人だけは半月足してあるけど、それでもお前は長すぎたんだ」

「……全然足りない……」
「本気か?」
「足りないよ……」




ーーーーーー*




次の日から、僕は魔獣討伐(しごと)へ行くことになった。
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