ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
「シャーロット……絶対どこにも行かないで……」
「はい、行きません」
先程からエスターは、玄関で私の手を握り青い瞳を潤ませている。
毎朝繰り返されるこのやり取りを、ヴィクトール様とローズ様が呆れ顔で見ていた。
「やっぱり心配だ……置いて行けない。父上、僕はやはり」
「シャーロットは私達が守るから大丈夫だ、さっさと行け」
「シャーロット……」
「行ってらっしゃいませ、私ちゃんと待っていますから」
エスターは、後ろ髪を引かれるように馬に乗り、迎えにきた騎士と共に沿岸地域へと向かった。
今、私はエスターと共にレイナルド公爵家に住んでいる。
ヴィクトール様はエスターに、二人でここから少し離れた公爵家の持つ屋敷を渡すから、そこに住むといいと言って下さったが、昼間私を一人にしては置けないと、彼が心配したのだ。
公爵家ならば、ヴィクトール様が大抵在宅しており、その『花』である元騎士のローズ様も居るから安心なのだとエスターは言っていた。
ローズ様は「元騎士と言っても訓練の時にヴィクトールに出会って、そのまま連れて行かれちゃったから、名ばかりよ」と笑っていた。
私はエスターがいない間、ローズ様やカミラさんに色々な事を教えて貰っていた。
公爵家の事、竜獣人の事、『花』の事。
その他に礼儀作法やダンスなど、しばらくの間メイドとして働いていた私には覚える事がたくさんあった。
「そんなに頑張らなくていいのよ、シャーロットちゃんはただ、エスターに愛されていればそれで充分なのよ」
「それで、いいのでしょうか……」
ここに来てからというもの、私は何もしていない気がする。
荒れていた手も蜜月の間に、スッカリ綺麗になっていた。
( ……それに、自分で言うのも何だけど……少しだけ綺麗になれた気がする……ほんの少しだけ )
ーーーーーー*
その招待状は、エスターが出掛けた後、ヴィクトール様が急遽、王都の端にいる騎士隊長に呼び出され出掛けられたタイミングで届いた。
「エリーゼ王女様からですか……」
突然のお茶会の招待だった。
それも本日昼、16歳から18歳迄の伯爵位以上の令嬢限定。
「怪しすぎるわ、それにコレは半ば強制的な招待状だわ、出席しなければ……罰金⁈ それもこんなに高額な……あり得ない、何なのよコレは!」
ローズ様は招待状を握り、立腹していた。
「伯爵以上なのに、何故私にも届けられたのでしょうか?」
私はまだエスターとは婚約している身だ。だから爵位は男爵なのだけど……。
「レイナルド公爵の婚約者だから特別だと書いてあるわ、困ったわね。エスターがいない時を狙ったのかしら……ヴィクトールも昼まで戻れないし……そうだ、お金払ってしまいましょう!」
「だ、ダメです!お金払うなんてやめて下さい」
( これ以上、私にお金を使わせられない!)
レイナルド公爵家からは私の高額な治療費と、ディーバン男爵家に支度金として多額のお金を支払って貰っている。( 叔父夫婦からはウエディングドレスが仕立てられて来る予定だが……それだけなの?)
エスターにも、ドレスを何着も買ってもらっている。
「でも……」
「きっと大丈夫です。お城ですし、メイドに知り合いもいますから、何かあれば助けて貰えると思います。それに他にもたくさんの御令嬢が来られる様ですし、お茶会と書いてありますから、心配する様な事は何もありませんよ」
私はローズ様を安心させようと微笑んだ。
「きっと私、エスターに怒られるわよ……」
急遽呼び出されたお茶会に、ローズ様はエスターの名前入りのドレスを着て行くようにと言われた。
( 古代文字を読める人がいないといいけど……素敵なドレスだけど知ってしまったら、ちょっと恥ずかしい……)
招待状には装飾品は一切禁止の旨が記載されていた。髪型も決まっており、不思議に思ったがその通りにする。
ローズ様の心配する声を後にして、私は城へと向かった。
「はい、行きません」
先程からエスターは、玄関で私の手を握り青い瞳を潤ませている。
毎朝繰り返されるこのやり取りを、ヴィクトール様とローズ様が呆れ顔で見ていた。
「やっぱり心配だ……置いて行けない。父上、僕はやはり」
「シャーロットは私達が守るから大丈夫だ、さっさと行け」
「シャーロット……」
「行ってらっしゃいませ、私ちゃんと待っていますから」
エスターは、後ろ髪を引かれるように馬に乗り、迎えにきた騎士と共に沿岸地域へと向かった。
今、私はエスターと共にレイナルド公爵家に住んでいる。
ヴィクトール様はエスターに、二人でここから少し離れた公爵家の持つ屋敷を渡すから、そこに住むといいと言って下さったが、昼間私を一人にしては置けないと、彼が心配したのだ。
公爵家ならば、ヴィクトール様が大抵在宅しており、その『花』である元騎士のローズ様も居るから安心なのだとエスターは言っていた。
ローズ様は「元騎士と言っても訓練の時にヴィクトールに出会って、そのまま連れて行かれちゃったから、名ばかりよ」と笑っていた。
私はエスターがいない間、ローズ様やカミラさんに色々な事を教えて貰っていた。
公爵家の事、竜獣人の事、『花』の事。
その他に礼儀作法やダンスなど、しばらくの間メイドとして働いていた私には覚える事がたくさんあった。
「そんなに頑張らなくていいのよ、シャーロットちゃんはただ、エスターに愛されていればそれで充分なのよ」
「それで、いいのでしょうか……」
ここに来てからというもの、私は何もしていない気がする。
荒れていた手も蜜月の間に、スッカリ綺麗になっていた。
( ……それに、自分で言うのも何だけど……少しだけ綺麗になれた気がする……ほんの少しだけ )
ーーーーーー*
その招待状は、エスターが出掛けた後、ヴィクトール様が急遽、王都の端にいる騎士隊長に呼び出され出掛けられたタイミングで届いた。
「エリーゼ王女様からですか……」
突然のお茶会の招待だった。
それも本日昼、16歳から18歳迄の伯爵位以上の令嬢限定。
「怪しすぎるわ、それにコレは半ば強制的な招待状だわ、出席しなければ……罰金⁈ それもこんなに高額な……あり得ない、何なのよコレは!」
ローズ様は招待状を握り、立腹していた。
「伯爵以上なのに、何故私にも届けられたのでしょうか?」
私はまだエスターとは婚約している身だ。だから爵位は男爵なのだけど……。
「レイナルド公爵の婚約者だから特別だと書いてあるわ、困ったわね。エスターがいない時を狙ったのかしら……ヴィクトールも昼まで戻れないし……そうだ、お金払ってしまいましょう!」
「だ、ダメです!お金払うなんてやめて下さい」
( これ以上、私にお金を使わせられない!)
レイナルド公爵家からは私の高額な治療費と、ディーバン男爵家に支度金として多額のお金を支払って貰っている。( 叔父夫婦からはウエディングドレスが仕立てられて来る予定だが……それだけなの?)
エスターにも、ドレスを何着も買ってもらっている。
「でも……」
「きっと大丈夫です。お城ですし、メイドに知り合いもいますから、何かあれば助けて貰えると思います。それに他にもたくさんの御令嬢が来られる様ですし、お茶会と書いてありますから、心配する様な事は何もありませんよ」
私はローズ様を安心させようと微笑んだ。
「きっと私、エスターに怒られるわよ……」
急遽呼び出されたお茶会に、ローズ様はエスターの名前入りのドレスを着て行くようにと言われた。
( 古代文字を読める人がいないといいけど……素敵なドレスだけど知ってしまったら、ちょっと恥ずかしい……)
招待状には装飾品は一切禁止の旨が記載されていた。髪型も決まっており、不思議に思ったがその通りにする。
ローズ様の心配する声を後にして、私は城へと向かった。