ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
突然訪問して来たレオン・ドルモア伯爵から、シャーロットが連れ去られたと聞いたローズは青ざめた。

急なお茶会の招待におかしいと思ってはいたが、まさかそんな事になるとは考えていなかったのだ。

「でも、どうしてその男はシャーロットちゃんを触れたの? 彼女には古代文字のドレスを着せていたのよ⁈」

「それが、ドレスは着替えさせられたらしいのです」
レオンの一言に、ローズとカミラはおもわず止まった。

「着替えた?」

「ドレスは会場で準備されていたらしく、一人で着替えをしなければならなかったと」

「そんなお茶会なんてある?」

「多分、最初から彼女を捕らえる事が目的だったかと思われます」

「なぜ?」

「彼女がいなければエスターを手に入れられると思っているのではないでしょうか」

「王妃様から、息子達の事は諦めたと聞いたのよ?」

「王女様達は……よく言えば粘り強く、何事もやり遂げる方達ですから」
「……それは……」

幼い頃から知っているが、このレオンという青年は女性の事を悪くは言わない紳士だ。
でも、その表現は違うんじゃないの? とローズは思った。


「ローズ様、ドレスが無くてもまだ大丈夫です。さすがに全て着替えた訳ではないでしょう」
「そ、そうね!」

 ローズとカミラは、ドレスだけでは心許ないと下着にも防御魔法が施されている物を着けさせていた。
しかしあれはドレスを着ていては何も起きない。魔法が発動するには下着姿になる必要がある。
それでは遅くないだろうか……触れなくても見られてしまう。危害は加えられなくなるが、それで安全かと云われたら……。

「カミラ……」
「ローズ様、すぐにヴィクトール様とエスター様にご連絡致します」

「ええ……しかし……家から出してしまったのは私よね……」
「ローズ様」
「やはりこうしてはいられない! カミラ、私が今から城に行くわ。一秒でも早くシャーロットを取り返さないと!」

「いや、それは危険です」
レオンが止めに入るがローズは聞かない。

 このまま待っているだけでは、シャーロットに何かあれば必ず後悔する。
それに……
せめてヴィクトール様が戻るまで待つ様に、と止めるカミラとレオンを振り切り、ローズは玄関へと向かった。
彼女の為に作られた庭を急ぎ足で抜ける。


「…………はっ!」

そこには、腕を組み仁王立ちする息子(エスター)がいた。


普段は冷静で思慮深い( 最近は変わったけれど ) エスターが……
( 黙っていれば ) 誰もが見惚れると云われる息子が……
恐ろしいほどの怒気を孕んでこっちを見ている……
怖っ……。


「 母上 」

一切目が笑っていないエスターが、口角を上げ優しい口調でローズに聞く。


「シャーロットは今、何処にいますか?」

「…………あ……」


「 母上 」

「お茶会に……行きました」
「お茶会? 誰のですか?」
「王女様達の……」
「王女⁈ 」

 自分と同じ青い目が向けられている、それだけなのに背筋が凍り付く様だわ……。

「急な招待だったのよ、行かなければ罰金だと書いてあって、私は払うと言ったのだけれど……シャーロットちゃんが、これ以上自分に無駄なお金を使って欲しくないって言ってね、それで……」



「……また王女か……」

エスターはそう言うとすぐに邸を出て行った。
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