ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

心配したんだよ

頭を優しく撫でる手

今、私に触れている温かい手を

間違える筈はない

……この手は私の愛しい人



「う……ん……」

 私の寝ているベッドに、黒いタキシードを着て仮面を着けた黒髪の男が腰掛けていた。
その人が私の頭を優しく撫でている。

「カ……イン?」
「……⁈ 」

 どうして私を触れるんだろう?
さっきカイン様は防御魔法が発動して触れないと言っていたのに……それから帰ると階段を降りて行ったのに。

「……カイン……しゃま?」
「それは誰⁈ 」

うーん、エスターの声はするのにエスターじゃない。
だって目の前の人は服も髪も真っ黒だ。エスターはキレイな銀の髪だから。

「 ほら、起きて……って、シャーロット」

 黒い人に抱き起こされた。
纏っていた上掛けがハラリと落ちる。
( ……あれ、この人私の名前知ってるのね? )


「なぜ……ちゃんと着てないんだ……」

黒い人は何だか怒っているみたいだ。

「どれしゅ? あーコレはでしゅねー」
「はっ? シャーロット?……酔っ払ってるの?」
「ん?」
「お酒飲んだの?」

違う、と私は頭を振った。
あ……クラクラする。

「のんでないれしゅ、ジューしゅをのんだの……れしゅ」

カイン様はジュースだと言っていた。
確かにおいしいぶどうのジュースだった。

……まぁ、今の状態が正常かと云われたら自信がないけど……何だか上手く喋れないし……


 黒い人は突然自分の髪をぐっと握り引っ張った。

「…………!」

被り物を外したそこから、サラリと銀色の髪が落ちる。
仮面を取ると青い瞳が煌めいていた。
< 61 / 145 >

この作品をシェア

pagetop