ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

会いたい……

「ええっ!シャーロットちゃん、どうしたの⁈ 」

 メイド服を着て客間の掃除をする私を見たローズ様が驚いて声を上げる。

「何もする事がないとどうしても悪いことばかり考えてしまって……だからお願いします。やらせてください」

 部屋に一人でいると嫌なことばかり考えてしまう。彼が怪我をしていないか、病気になっていないか( ほとんど怪我も病気もしないらしいけど……) 。
体を動かしていれば考え事をせずにいられるかも知れない、という安易な思いでカミラさんに頼んでみると、メイド服を貸してくれ掃除ならとやらせてくれた。
とはいえ今いる客間だけなのだが。

それだけではすぐに終わってしまうと言うと、カミラさんにそれなら料理をしてみないかと提案された。
ディーバン男爵家では皿洗いしかした事がなく、城では主にランドリーメイドだった為、料理をするのは初めてだ。

 長年レイナルド公爵家でコックをしている女性のダーナさんが教えてくれる事になった。

「エスター様は基本的に肉ですね。ヴィクトール様もオスカー様も肉、肉しか召し上がりません」
「……お肉だけ?」
「そうです、それもシンプルに塩で焼いた物です」
「それは……私は覚える必要があるのでしょうか?」

そう言った私の手を強く握り、ダーナさんは熱く語った。

「だから!だからこそです。シャーロット様に肉以外の食材でお料理を作って頂き、食べさせて欲しいのです。そして美味しいと言わせたい!」

 そんな私達の様子を頬杖をつきながら見ていたローズ様が「無理ヨォ、私もやったけど全然ダメだったもの」と笑う。

ダーナさんは項垂れて
「そうなんです……以前ローズ様にお料理を作って頂きましたが結果は惨敗。あの時はキッシュでした、だから今回はお菓子にします」
拳を握るダーナさんはヤル気に満ちている様だ。

「お菓子?」

「そうです、クッキーを作って頂きます。ふふふ……今度は必ず食べます。エスター様は必ず食べます! ローズ様も一緒に作りましょう、ヴィクトール様にも食べて頂きます」

ダーナさんはニマニマと微笑んでいた。

…………⁈
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