ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
エスターに会えないまま、さらに四日が過ぎた。
今日はソフィアの結婚式だ。
一緒に出席するはずだったエスターの代わりに、ヴィクトール様とローズ様が参加して下さった。
青空の下、レオン様の腕を組み微笑んでいるソフィアはとても綺麗で輝いていた。その隣には、レオン様のお二人の奥様方も嬉しそうに並んでいる。皆、とても仲が良さそうだ。
本当によかった、と告げると次はシャーロットね、とソフィアがブーケを渡してくれた。
「ありがとうソフィア」
「シャーロットの結婚式も楽しみにしているわ」
式場にはソフィアの両親である叔父夫婦と兄のカルロも来ていた。
叔父夫婦はレイナルド夫妻に気付くとペコペコと頭を下げて挨拶をし、何やら話を始めた。
( またお金の話じゃないといいけど…… )
レイナルド夫妻から少し離れたところに立ち、先程貰ったブーケを眺めていた私のもとへ、何故かカルロがやってきた。
「やあ、シャーロット久しぶりだね」
「カルロ……元気そうね」
気軽に話しかけてきたカルロは、私がディーバン家にいた時は罵声を浴びせる事は無かった。しかし常にいない者の様に扱われていたのだ。まさか声を掛けてくるなんて。
「何だか顔色が悪い、公爵家は大変なのか?」
そんな事を言いながら、カルロが私の頬に触れてこようとする。
差し出された手に驚いて、おもわず後ずさり距離をとった。
「……そんな事はないわ」
「本当に? 大変ならいつでも家に帰って来いよ」
「か、帰らないわ、なぜそんな事言うの⁈ 」
カルロの長い前髪の間からは鈍い光りを宿した紺色の目が私を覗いている。
( どうしたの? こんな風に見られる事なんて無かったのに)
「冷たく当たっていた事、怒っているんだな」
ふっと口角を上げるカルロ。
いままで見たことのない彼の表情に怖気を感じた。
「……そんな事何とも思っていない」
「いいんだ、分かってる」
カルロは私の手を無理に取ると手のひらに小さな袋を握らせ、耳元に顔を寄せて囁いた。
「待ってるから、ロッティ」
……えっ⁉︎ 驚いて思わずカルロを間近で見てしまった。
カルロからはまるで愛しい者を見るかのような目を向けられている。
( ……何なの⁈ )
他の招待客と話をしていたヴィクトール様が私達の様子に気付き急いでこちらへ向かって来られた。
それに気づいたカルロは、何事もなかったように私とヴィクトール様にお辞儀をすると叔父夫婦の方へと戻っていった。
「目を離して済まなかった、シャーロット何かされたか? あれはディーバン男爵の嫡男だろう?……獣人ではないよね」
「はい、カルロは獣人ではありません。今まであまり話をした事はなかったのですが、何故か話しかけてきて……」
「……そうか」
カルロの様子がおかしかった事や手のひらにある小さな袋の事はヴィクトール様には何だか話せなかった。
結婚式から帰るとヴィクトール様はまた討伐へと向かわれ、あと三日で終わるからとローズ様に告げられていた。
客間に戻りソフィアから貰ったブーケを窓辺に飾る。
昼間、式場でカルロに手渡された小さな袋を開けてみた。
袋の中には金の指輪が入っていた。
全体に模様が彫ってあり、紺色の宝石が埋め込まれている。
……なぜ私にこんな物渡すの?
自分の目の色や髪の色の指輪は、特定の相手にしか渡さない物だ。
私はエスターと婚約している。
あの時、彼が婚姻を求めてくれたのをカルロも見ていたはずだ。
それなのに『いつでも家に帰って来いよ』と言ったり、指輪を渡してくるなんて……何だか怖い……。
すぐに指輪を袋に戻すと部屋の小さな机の引き出しに仕舞った。
早く返さないと……。
今日はソフィアの結婚式だ。
一緒に出席するはずだったエスターの代わりに、ヴィクトール様とローズ様が参加して下さった。
青空の下、レオン様の腕を組み微笑んでいるソフィアはとても綺麗で輝いていた。その隣には、レオン様のお二人の奥様方も嬉しそうに並んでいる。皆、とても仲が良さそうだ。
本当によかった、と告げると次はシャーロットね、とソフィアがブーケを渡してくれた。
「ありがとうソフィア」
「シャーロットの結婚式も楽しみにしているわ」
式場にはソフィアの両親である叔父夫婦と兄のカルロも来ていた。
叔父夫婦はレイナルド夫妻に気付くとペコペコと頭を下げて挨拶をし、何やら話を始めた。
( またお金の話じゃないといいけど…… )
レイナルド夫妻から少し離れたところに立ち、先程貰ったブーケを眺めていた私のもとへ、何故かカルロがやってきた。
「やあ、シャーロット久しぶりだね」
「カルロ……元気そうね」
気軽に話しかけてきたカルロは、私がディーバン家にいた時は罵声を浴びせる事は無かった。しかし常にいない者の様に扱われていたのだ。まさか声を掛けてくるなんて。
「何だか顔色が悪い、公爵家は大変なのか?」
そんな事を言いながら、カルロが私の頬に触れてこようとする。
差し出された手に驚いて、おもわず後ずさり距離をとった。
「……そんな事はないわ」
「本当に? 大変ならいつでも家に帰って来いよ」
「か、帰らないわ、なぜそんな事言うの⁈ 」
カルロの長い前髪の間からは鈍い光りを宿した紺色の目が私を覗いている。
( どうしたの? こんな風に見られる事なんて無かったのに)
「冷たく当たっていた事、怒っているんだな」
ふっと口角を上げるカルロ。
いままで見たことのない彼の表情に怖気を感じた。
「……そんな事何とも思っていない」
「いいんだ、分かってる」
カルロは私の手を無理に取ると手のひらに小さな袋を握らせ、耳元に顔を寄せて囁いた。
「待ってるから、ロッティ」
……えっ⁉︎ 驚いて思わずカルロを間近で見てしまった。
カルロからはまるで愛しい者を見るかのような目を向けられている。
( ……何なの⁈ )
他の招待客と話をしていたヴィクトール様が私達の様子に気付き急いでこちらへ向かって来られた。
それに気づいたカルロは、何事もなかったように私とヴィクトール様にお辞儀をすると叔父夫婦の方へと戻っていった。
「目を離して済まなかった、シャーロット何かされたか? あれはディーバン男爵の嫡男だろう?……獣人ではないよね」
「はい、カルロは獣人ではありません。今まであまり話をした事はなかったのですが、何故か話しかけてきて……」
「……そうか」
カルロの様子がおかしかった事や手のひらにある小さな袋の事はヴィクトール様には何だか話せなかった。
結婚式から帰るとヴィクトール様はまた討伐へと向かわれ、あと三日で終わるからとローズ様に告げられていた。
客間に戻りソフィアから貰ったブーケを窓辺に飾る。
昼間、式場でカルロに手渡された小さな袋を開けてみた。
袋の中には金の指輪が入っていた。
全体に模様が彫ってあり、紺色の宝石が埋め込まれている。
……なぜ私にこんな物渡すの?
自分の目の色や髪の色の指輪は、特定の相手にしか渡さない物だ。
私はエスターと婚約している。
あの時、彼が婚姻を求めてくれたのをカルロも見ていたはずだ。
それなのに『いつでも家に帰って来いよ』と言ったり、指輪を渡してくるなんて……何だか怖い……。
すぐに指輪を袋に戻すと部屋の小さな机の引き出しに仕舞った。
早く返さないと……。