ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
両親は部屋中を探しているようだ。
ガタガタと彼方此方の引き出しを開けている。

「まぁいいさ、その内ロッティと一緒に指輪も帰って来るから」
廊下で一人ほくそ笑むカルロ。


 昼が過ぎた頃、ディーバン男爵家にレイナルド公爵家から箱が届けられた。

「何だ?」
「早く開けてみましょうよ」

 ディーバン男爵夫妻は、きっと良いものに違いないと嬉しそうに箱を開けた。

 箱の中には一通のカードと小さな袋、小さな箱が入っていた。

カードには【壊してしまいました。これは代わりの品です】とだけ書いてある。

「壊した? 何の事だ?」

 開けてみた小さな袋には、先程探していた指輪が形を変えて入っていた。

「これは……私の指輪……こんなに割れて……でも、なぜレイナルド公爵から送ってくるの?」

「いやっ、そんなものどうだっていい、見てみろコレを!」

ディーバン男爵は小さな箱を開けて飛び上がらんばかりだ。

箱には金塊が入っていた。それは小さな物だったが

「コレはその指輪の数十倍の価値があるぞ!」
「ええっ!」

 男爵夫妻は割れた指輪の事などすっかり忘れて金塊を掲げて喜んだ。



そんな両親の姿を見て、カルロはため息を吐く。

「ロッティは一緒じゃないのか……」

婚約指輪だけ送ってくるなんて……
サイズが合わなかったのかな?

まあ、そのうちロッティも帰ってくるだろう。

 彼は今だにディーバン男爵家で、二度と戻る事はないシャーロットを、何をするでもなく待ち続けているのだった。
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