ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
エスターが帰って来てから五日後、オスカー様がレイナルド邸に帰って来られた。

 私は城で助けて貰って以来、オスカー様に会うのは二度目だ。
( とは言っても助けてもらった時の事は、殆ど憶えていないのだけれど )


「初めまして、シャーロットです」

 オスカー様はキョトンとした顔をしている。
一度会っているとはいえ、私達が言葉を交わすのは初めてになるのだから。

「あ……ああ……そうか、俺あの日以来君に会っていなかったね」
「はい、お城では助けていただきありがとうございました」

 やっとお礼を言う事が出来た。
あの日、必死な顔をして私に手を伸ばしてくれた美少年はオスカー様だったのだ。
( マリアナ王女様付きの侍女さん達が馬車の中で教えてくれた)


 オスカー様はエスターと、とてもよく似ている。
エスターよりも長い銀の髪を後ろで一つに結び、長めの前髪は左に流している。スッと通った鼻筋と吸い込まれてしまいそうな真っ青の瞳。容姿端麗、まばゆいほどの美男だ。

「あの時は、まさか君がエスターの『花』だとは思わなかったからね、本当に助けられて良かった。あの背中の傷も、すっかり綺麗になったんだってね」

「背中の傷……」
最初に見たのだろうか? そう思っていると、私のその表情に気が付いたオスカー様が「サラの所で見たんだ」と言われた。

「治療室で見られたのですか?」

「そう、あの傷は凄く痛そうだったね、こう君の白い肌に斜めに紫色の……あ……」

 私の横でエスターが、オスカー様を睨んでいた。
( 見られていたのね、私の背中……うっ、恥ずかしい……でも傷を見たんだし…… )

「背中しか見てないから、そもそも俺は遠くから見ただけだから。意外に胸あるなぁとか、思ってもいないから」

「オスカー……どこ見てたんだよ」

「……竜獣人は目がいいですからね……胸、見えたんですか……」
( ううっ、婚約者のお兄さんに見られるなんて)

「いやっ!うつ伏せだったからっ、横しか見えてない‼︎ 」
( 横……横しかって……)

「もう話すな、オスカー」

 エスターが冷ややかな声で言うとオスカー様は「はい、すみません……」と呟いた。


 オスカー様が私にひとしきり謝った後、エスターと話があるからと二人は執務室へ向かった。
< 89 / 145 >

この作品をシェア

pagetop