ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
いなくなったあの子
「あの子がいなくなった?」
翌日、オスカーとエスターは城に向かい治療室を訪ねた。
そこで治癒魔法士サラから、女の子がいなくなったと聞いて驚いていた。
「私も気になっていたから昨夜は遅くまでここに居たのよ、それで一旦、部屋へ戻って仮眠をとって、今朝早くにここへ戻ると既にあの子の姿はなかったの」
女の子が寝ていたベッドの上には、キチンと畳まれた掛布が置いてあった。
エスターはそれをそっと触る。傷口は塞がっていてもまだ痛むはずだ……それに傷痕も残っているのに。
「誰か分からないのですか? 城のメイド服を着ていたのだから、調べればわかるのでは?」
サラに詰め寄る様にエスターが尋ねる。
そんな弟の様子を初めて見たオスカーは、ちょっと驚いていた。
エスターは自分より冷静に物事を判断する、それに他人に対してはあまり興味が無さそうだったからだ。
( ……助けた子だからか? それとも巻き添えにしてしまった責任を感じている? )
サラはエスターに落ち着くように言うと、あの子を捜すのは難しいと答えた。この城で働くメイドは多い。それに下働きとなると名前しか登録されて居らず、茶色い髪とメイド服、それだけしか分からないとなれば当てはまる者はどれだけのことか。
「あの場所を通る者となると、ランドリーメイドかハウスメイドだろうと思うけど」
「では、その者達に聞きに行きます」
エスターはそう言うとすぐにも行こうとした。それを慌ててサラが止める。
「いけません! 下働きの者達の場所には公爵様のように身分の高い者は入れません」
「なぜ⁈ 」
「そういう決まりですから」
サラにそう言われ、エスターは歯痒そうに唇を噛み締めていた。
「エスター、どうしたんだ? 確かにあの傷は気になるけど自ら居なくなったんだ、大丈夫なんじゃないのか?」
「でも、あの背中の傷痕は消えていないんだよ⁈ オスカー兄さんだって見ただろう⁈ 若い女の子が、あんな大きな傷痕を……」
エスターは掌を見つめ、それをぐっと握りしめた。
「オスカー兄さん! あの子を助けた時顔を、目を見たでしょう? 目の色は⁈ 覚えてないの⁈ 」
「顔……目の色? あの時はとにかく必死だったから……どうだったかな……確かわりとキレイな子だった……目は……あの時、ああ、一瞬目があった……緑色……だったと思う」
「茶色い髪に緑色の目……そんな若い子ならたくさんいるわよ?」
サラは困ったような顔をしながら、エスターの様子を伺っていた。
顔がキレイなのは寝顔で分かっている。
そうじゃない、なんでこんなにあの子が気になっているのか……。
こんな事なら目覚めるまで、ずっと側に居ればよかった……。
狼獣人ならば匂いを手繰る事が出来ただろう、でも僕は竜獣人だ、どんなに眼がよくても視界に入らなければ意味はない。
僕は……何故こんなことまで考えるのか……。
エスターは自分のこの気持ちが何であるのかがよく分からずにいた。
3人が治療室で話をしていると、王女付きの侍女がやって来た。
「オスカー様、エスター様、サロンにて王女様方が是非お茶をご一緒に、と申しております」
「あら、待ちきれずにお呼び出しになられた様ですね」
伝えに来た侍女を見て、サラは少し呆れた様に言うと、私は仕事に戻ります、失礼しますと奥の部屋へと行ってしまった。
オスカーとエスターが侍女を見つめた、二人の青い瞳に見つめられ、居た堪れないと同時に恥ずかしくなり、侍女は頬を染め視線を下げた。
「……遊びに来た訳じゃない」
エスターはムッとした顔で言う。
「少しだけ顔を出そう、じゃないとこの人が王女様方から叱られるよ」
オスカーはエスターを宥めるように言うと、侍女に「ね?」と優しく言った。
翌日、オスカーとエスターは城に向かい治療室を訪ねた。
そこで治癒魔法士サラから、女の子がいなくなったと聞いて驚いていた。
「私も気になっていたから昨夜は遅くまでここに居たのよ、それで一旦、部屋へ戻って仮眠をとって、今朝早くにここへ戻ると既にあの子の姿はなかったの」
女の子が寝ていたベッドの上には、キチンと畳まれた掛布が置いてあった。
エスターはそれをそっと触る。傷口は塞がっていてもまだ痛むはずだ……それに傷痕も残っているのに。
「誰か分からないのですか? 城のメイド服を着ていたのだから、調べればわかるのでは?」
サラに詰め寄る様にエスターが尋ねる。
そんな弟の様子を初めて見たオスカーは、ちょっと驚いていた。
エスターは自分より冷静に物事を判断する、それに他人に対してはあまり興味が無さそうだったからだ。
( ……助けた子だからか? それとも巻き添えにしてしまった責任を感じている? )
サラはエスターに落ち着くように言うと、あの子を捜すのは難しいと答えた。この城で働くメイドは多い。それに下働きとなると名前しか登録されて居らず、茶色い髪とメイド服、それだけしか分からないとなれば当てはまる者はどれだけのことか。
「あの場所を通る者となると、ランドリーメイドかハウスメイドだろうと思うけど」
「では、その者達に聞きに行きます」
エスターはそう言うとすぐにも行こうとした。それを慌ててサラが止める。
「いけません! 下働きの者達の場所には公爵様のように身分の高い者は入れません」
「なぜ⁈ 」
「そういう決まりですから」
サラにそう言われ、エスターは歯痒そうに唇を噛み締めていた。
「エスター、どうしたんだ? 確かにあの傷は気になるけど自ら居なくなったんだ、大丈夫なんじゃないのか?」
「でも、あの背中の傷痕は消えていないんだよ⁈ オスカー兄さんだって見ただろう⁈ 若い女の子が、あんな大きな傷痕を……」
エスターは掌を見つめ、それをぐっと握りしめた。
「オスカー兄さん! あの子を助けた時顔を、目を見たでしょう? 目の色は⁈ 覚えてないの⁈ 」
「顔……目の色? あの時はとにかく必死だったから……どうだったかな……確かわりとキレイな子だった……目は……あの時、ああ、一瞬目があった……緑色……だったと思う」
「茶色い髪に緑色の目……そんな若い子ならたくさんいるわよ?」
サラは困ったような顔をしながら、エスターの様子を伺っていた。
顔がキレイなのは寝顔で分かっている。
そうじゃない、なんでこんなにあの子が気になっているのか……。
こんな事なら目覚めるまで、ずっと側に居ればよかった……。
狼獣人ならば匂いを手繰る事が出来ただろう、でも僕は竜獣人だ、どんなに眼がよくても視界に入らなければ意味はない。
僕は……何故こんなことまで考えるのか……。
エスターは自分のこの気持ちが何であるのかがよく分からずにいた。
3人が治療室で話をしていると、王女付きの侍女がやって来た。
「オスカー様、エスター様、サロンにて王女様方が是非お茶をご一緒に、と申しております」
「あら、待ちきれずにお呼び出しになられた様ですね」
伝えに来た侍女を見て、サラは少し呆れた様に言うと、私は仕事に戻ります、失礼しますと奥の部屋へと行ってしまった。
オスカーとエスターが侍女を見つめた、二人の青い瞳に見つめられ、居た堪れないと同時に恥ずかしくなり、侍女は頬を染め視線を下げた。
「……遊びに来た訳じゃない」
エスターはムッとした顔で言う。
「少しだけ顔を出そう、じゃないとこの人が王女様方から叱られるよ」
オスカーはエスターを宥めるように言うと、侍女に「ね?」と優しく言った。