ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
久しぶりに見たエスターの部屋は、大きく変わっていた。片開きだった扉は、両開きの大きな白い扉になっている。
その扉をカミラさんとバロンさんが開ける。
部屋の中も大きく変わっていた。
壁だった所は一面ガラス窓に変わり、そこは広間の様になっていた。床は濃紺地に銀糸で模様の描かれた絨毯が敷き詰められている。壁は白く、そこにも銀色の模様が入っていた。高い天井からは豪華なシャンデリアが輝きを放ち部屋の中を照らしている。
その広間の中央に、銀色に青い装飾のタキシードを着たエスターが、コチラを向いて立っていた。
「さあ、行ってあげて」
ローズ様がそっと私の肩を押す。ヴィクトール様とオスカー様が微笑み頷いている。
足を進めて中へと入ると、背後で扉は静かに閉められた。
少し緊張しながら一歩ずつ進み、彼の前に立った。
エスターは私に向けて恭しく礼をする。
「宜しければ、僕と踊っていただけませんか?」
顔を上げ、艶やかな笑みを浮かべるエスターに、思わず見惚れてしまい頬がポッと熱を持つ。
「……はい」
小さな声でそう告げた私に、彼は手を差し伸べる。その手に私が手を重ねると、エスターは指先にチュと口づけた。
「あ、音楽が無かったな……」
「音楽?」
「いや、無くても問題ない……僕に任せて」
彼がスッと足を運ぶ、流れるように私の体も動き出し、私達は互いを見つめ合いながらステップを踏んでいく。
足を運ぶ時の靴音とドレスの衣擦れの音、それに私達の息づかいだけが聞こえる。
「エスター……凄く上手なのね」
「シャーロットも上手いよ」
フワリと体を浮かされてクルリと回れば、ドレスは広がり、シャンデリアの光を受けて輝きを放つ。
「綺麗だ……僕のシャーロット」
「私のエスターも……素敵よ」
窓ガラスに映る私は、彼の腕の中で幸せそうに笑ってダンスをしている。
ふとエスターが足を止め、私を抱き止めた。
「少し外へ出よう」
少し息の弾んでいる私の手を取り、新たに作られたバルコニーへと誘う。
「見ていて」
そういうと彼はピィッ!と指笛を鳴らした。
それが合図だったかの様に、下から光る物が飛んで来た。
部屋から漏れる明かりと夜空の星の光り、そして飛んできたたくさんの光の玉が、幻想的に私達の周りを彩る。
エスターは私の前に跪き、青かったその瞳を金色に輝かせ、私を見つめた。
「……初めて君に会った時、君は血だらけで、君を抱き抱えた僕は必死にサラの所へ走ったんだ」
「うん、私は覚えていないけど」
「死んでしまうかと思ったんだよ? 僕は泣きそうになったんだから」
「本当?」
「うん」
クスッと私達は笑いあう。
「次の日行ったら君はいなくなっていて、僕は凄く後悔した」
「お金払えないから逃げちゃったの……」
「でも、その後また君に出会えた」
「エスターが物干場に飛んで来てくれた」
「気が付いたら君の下へ体が向かっていたんだ」
「体が?」
「……君が恋しくて仕方なかったんだ」
彼の瞳がせつなげに揺めいて私を捕らている。
「シャーロット」
「……はい」
「僕はもう、君がいないと生きていけない」
「……私もエスターが側にいないと生きていけない」
私の言葉にエスターは泣きそうな笑顔を見せた。
「シャーロット……僕と結婚して下さい」
「はい」
彼は私の手袋を外し、タキシードのポケットから銀色の指輪を取るとスッと私の左手の薬指に着けた。
それに彼が口づけると、何も無かった指輪に一瞬青い文字が浮かび上がる。それからゆっくりと文字は金色へと変わっていった。
エスターは立ち上がり、額と額をくっつけ合う様にして私を見る。
吐息がかかり、彼の息遣いがいつもより早いのを感じた。
「……キスしてもいい?」
「……はい」
まるで初めてキスをするように、彼は優しく唇を重ねた。
キスを交わす私達の周りを、ふわふわと光る玉が飛んでいる。
「……ん……っ」
エスターが、だんだん……ちょっと……
何度も角度を変える度、優しかったキスが、どんどん深くなっていく。
「んんっ……ん……んーーっ」
キスが激しくなるに連れ、何故か光の玉も数を増してきて眩しくなってきた。
「エ、……んっ……」
エスターの肩を叩くとやっと唇を離してくれた。呼吸を整えながら指差しで光の玉の事を伝える。
「えっ、ああジークの奴……ちゃんとして欲しいな」
「ジーク?」
「そう、君を攫った代償にね、ちょっと魔獣を出してもらったんだよ、コイツら綺麗だろう?」
「本当……」
( これが魔獣なの? こんなに綺麗な物もいるんだ )
「すごくキレイ……」
「シャーロットの方がずっと綺麗だよ」
エスターが私の肩を抱き、私は寄り添うように彼に体を預ける。
夜空の星と周りを飛び交う光の玉が、私達を祝福する様に煌めいていた。
「エスター、素敵なプロポーズをありがとう……大好き」
そう言って、今度は私からキスをした。
その扉をカミラさんとバロンさんが開ける。
部屋の中も大きく変わっていた。
壁だった所は一面ガラス窓に変わり、そこは広間の様になっていた。床は濃紺地に銀糸で模様の描かれた絨毯が敷き詰められている。壁は白く、そこにも銀色の模様が入っていた。高い天井からは豪華なシャンデリアが輝きを放ち部屋の中を照らしている。
その広間の中央に、銀色に青い装飾のタキシードを着たエスターが、コチラを向いて立っていた。
「さあ、行ってあげて」
ローズ様がそっと私の肩を押す。ヴィクトール様とオスカー様が微笑み頷いている。
足を進めて中へと入ると、背後で扉は静かに閉められた。
少し緊張しながら一歩ずつ進み、彼の前に立った。
エスターは私に向けて恭しく礼をする。
「宜しければ、僕と踊っていただけませんか?」
顔を上げ、艶やかな笑みを浮かべるエスターに、思わず見惚れてしまい頬がポッと熱を持つ。
「……はい」
小さな声でそう告げた私に、彼は手を差し伸べる。その手に私が手を重ねると、エスターは指先にチュと口づけた。
「あ、音楽が無かったな……」
「音楽?」
「いや、無くても問題ない……僕に任せて」
彼がスッと足を運ぶ、流れるように私の体も動き出し、私達は互いを見つめ合いながらステップを踏んでいく。
足を運ぶ時の靴音とドレスの衣擦れの音、それに私達の息づかいだけが聞こえる。
「エスター……凄く上手なのね」
「シャーロットも上手いよ」
フワリと体を浮かされてクルリと回れば、ドレスは広がり、シャンデリアの光を受けて輝きを放つ。
「綺麗だ……僕のシャーロット」
「私のエスターも……素敵よ」
窓ガラスに映る私は、彼の腕の中で幸せそうに笑ってダンスをしている。
ふとエスターが足を止め、私を抱き止めた。
「少し外へ出よう」
少し息の弾んでいる私の手を取り、新たに作られたバルコニーへと誘う。
「見ていて」
そういうと彼はピィッ!と指笛を鳴らした。
それが合図だったかの様に、下から光る物が飛んで来た。
部屋から漏れる明かりと夜空の星の光り、そして飛んできたたくさんの光の玉が、幻想的に私達の周りを彩る。
エスターは私の前に跪き、青かったその瞳を金色に輝かせ、私を見つめた。
「……初めて君に会った時、君は血だらけで、君を抱き抱えた僕は必死にサラの所へ走ったんだ」
「うん、私は覚えていないけど」
「死んでしまうかと思ったんだよ? 僕は泣きそうになったんだから」
「本当?」
「うん」
クスッと私達は笑いあう。
「次の日行ったら君はいなくなっていて、僕は凄く後悔した」
「お金払えないから逃げちゃったの……」
「でも、その後また君に出会えた」
「エスターが物干場に飛んで来てくれた」
「気が付いたら君の下へ体が向かっていたんだ」
「体が?」
「……君が恋しくて仕方なかったんだ」
彼の瞳がせつなげに揺めいて私を捕らている。
「シャーロット」
「……はい」
「僕はもう、君がいないと生きていけない」
「……私もエスターが側にいないと生きていけない」
私の言葉にエスターは泣きそうな笑顔を見せた。
「シャーロット……僕と結婚して下さい」
「はい」
彼は私の手袋を外し、タキシードのポケットから銀色の指輪を取るとスッと私の左手の薬指に着けた。
それに彼が口づけると、何も無かった指輪に一瞬青い文字が浮かび上がる。それからゆっくりと文字は金色へと変わっていった。
エスターは立ち上がり、額と額をくっつけ合う様にして私を見る。
吐息がかかり、彼の息遣いがいつもより早いのを感じた。
「……キスしてもいい?」
「……はい」
まるで初めてキスをするように、彼は優しく唇を重ねた。
キスを交わす私達の周りを、ふわふわと光る玉が飛んでいる。
「……ん……っ」
エスターが、だんだん……ちょっと……
何度も角度を変える度、優しかったキスが、どんどん深くなっていく。
「んんっ……ん……んーーっ」
キスが激しくなるに連れ、何故か光の玉も数を増してきて眩しくなってきた。
「エ、……んっ……」
エスターの肩を叩くとやっと唇を離してくれた。呼吸を整えながら指差しで光の玉の事を伝える。
「えっ、ああジークの奴……ちゃんとして欲しいな」
「ジーク?」
「そう、君を攫った代償にね、ちょっと魔獣を出してもらったんだよ、コイツら綺麗だろう?」
「本当……」
( これが魔獣なの? こんなに綺麗な物もいるんだ )
「すごくキレイ……」
「シャーロットの方がずっと綺麗だよ」
エスターが私の肩を抱き、私は寄り添うように彼に体を預ける。
夜空の星と周りを飛び交う光の玉が、私達を祝福する様に煌めいていた。
「エスター、素敵なプロポーズをありがとう……大好き」
そう言って、今度は私からキスをした。