不遇な転生王女は難攻不落なカタブツ公爵様の花嫁になりました
(でも、ゲームのプロローグがはじまる前に結婚かー。これで話の展開が変わってくれるといいけど……そう簡単じゃあなさそうね)

祭壇の前にたどり着いて、ソフィアは父親のもとを離れて新郎の隣に立つ。
 
こっそり背の高い彼の表情を確認すると、思いっきり仏頂面だった。とてもではないが、今日結婚する新郎の表情とは思えない。あきらかに不機嫌そうだ。

結婚を取り仕切る大司祭も、ランドールのしかめっ面に戸惑っている。

(表情くらい取り繕ってくれてもいいのにね……って、無理か、ランドールだし)

晴れてランドールとの結婚にこぎつけたソフィアだって、彼が望んで結婚を選択したわけではないことを知っている。

ランドールはソフィアのことを嫌っているし、ソフィアの異母姉で『グラストーナの雪』のヒロインであるキーラの"ソフィアは偽物の王女"という言葉を信じているから、この結婚を忌々(いまいま)しく思いこそすれ、喜んでいるはずがないのである。

現に、結婚式の準備には、ヴォルティオ公爵家の使用人を貸し出しはしたものの、本人はまったく無関心で、勝手にしろと言わんばかりだった。

大聖堂で大々的に結婚式を挙げることだって、国王のごり押しで実現したことであり、ランドールは式すら挙げる必要がないとばかりの態度だったのである。

普通の公爵ならば国王や王女に対するこの態度だけで首が飛びかねないほどの大惨事だろうが、王の甥であるランドールはどこ吹く風で、どれだけ王が苦言を呈そうと生返事ばかりしていたというのだから、ある意味すごい。
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