不遇な転生王女は難攻不落なカタブツ公爵様の花嫁になりました
「新郎、ランドール・ヴォルティオ。あなたはソフィアを妻とし、(すこ)やかなるときも、()めるときも、妻を敬い、慰め合い、ともに助け合って、その命ある限り愛することを誓いますか?」

「…………」

(ちょっと!)

大司祭がお決まりの誓いの言葉を言ったのに、沈黙する新郎がいるか!

想定外の展開に冷や汗をかいていると、ちらりとソフィアを見下ろしたランドールが、ぐっと眉間に(しわ)を寄せて、不服そうな表情で、ぼそりとつぶやいた。

「……誓います」

(絶対誓ってないよね!?)

心の中で盛大なツッコミをしつつ、大司祭がソフィアにも同じことを訊ねてきたので、ランドールへの意趣返しも含めて元気よく「誓います!」と答えてやる。

ふふんっと得意げにランドールを見上げると仏頂面がさらにひどくなった。

視線が絡むと、彼はぷいっと顔を背けて、さっさとよこせとばかりに大司祭から羽ペンを受け取ると、結婚宣誓書にサインをする。

ソフィアもサインをして、さあ、誓いのキスだとドキドキしはじめたとき、ランドールがふいに振り返った。そして――

(ちょっとおおおおおお!)

ソフィアは心の中で悲鳴をあげた。
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