アンドロイド・ニューワールドⅡ
「どうどう。お二人共落ち着いてください。どうどう」

と、私は二人の気を沈めました。

「何だよ。口挟んでくるなよ」

「私はリーダーですから、グループの危機とあれば口を挟みもします。お二人共落ち着きましょう」

と、私は言いました。

「コンロは二つしかないのですから、ここは民主的に解決しましょう。ステーキの焼き時間は、あとどれくらいですか?」

と、私はステーキ担当の女子生徒に尋ねました。

「え?それは…全部で、あと15分くらい?」

と、彼女は答えました。

「では、鮭の焼き時間はどれくらいですか?」

と、私は鮭茶漬け担当の男子生徒に尋ねました。

「5分くらいだよ」

と、彼は答えました。

成程、ではこうしましょう。

「一端、先にコンロを一つ開けて、鮭を焼いてしまいましょう。こちらの方が時間がかかりませんから。鮭に火が通ったら、ステーキを焼き直しましょう」

と、私は提案しました。

しかし。

「えぇ?何で、私が退かなきゃならないのよ」

と、ステーキ担当の女子生徒は不満を述べました。

「お前が長々とコンロ占領してるからだろ?」

と、鮭茶漬け担当の男子生徒は言い返しました。

また、喧嘩が再燃しそうな勢いですね。

とりあえず、喧嘩腰で会話をするのをやめましょう。

「どうどう。落ち着いてください」

「その、どうどうってのやめてくれない?馬じゃないんだから」

「それは失礼しました」

と、私は答えました。

人を落ち着けるには、最適の言葉だと思っていたのですが。

むしろ、不快にさせてしまっていたようです。

人間とは、分からないものですね。

「ともかく、コンロは二口しかないのですから、民主的に使用しましょう。不満を言っても、材料に火が通る訳ではありません」

と、私は言いました。

「ここはリーダーである私の顔を立てて、そのようにしてください」

「…あっそ。好きにすれば?」

「あぁ。好きにするよ」

と、お二人は何とか、和解してくれました。

和解のうちに入るのでしょうか?何だか不貞腐れていますが。

何だか、不穏な空気です。




…などという、諍いを収めるのに夢中で、そのときの私は、まだ気がついていませんでした。

残る二人のポタージュ担当が、もっと不穏な空気になっていたことに。
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