アンドロイド・ニューワールドⅡ
結局。

ポタージュの続きは私と奏さんで作り。

ロールケーキの方も、湯野さんがおたおたしていたので、途中からは私が代わりました。

昨日予習しておいて、つくづく良かったと実感します。

お陰で、スムーズに出来ました。

4品共、ギリギリではありましたが、時間内に作り終えることが出来ました。

その後実食したのですが、味の方はというと。

チキンステーキが若干焼き過ぎて固くなっていた他は、普通に美味しく食べられました。

が、食べている間、グループの誰もが、何も、一言も言葉を発しませんでした。

非常に空気が重かったように感じるのですが、何かあったのでしょうか。

私の怒りは既に沈静化していたので、普通に喋って頂いて良かったのですが。

そして。

食べ終わった後、後片付けの担当は、湯野さんと、先程私がビンタした女子生徒がやることになっていました。

しかし、お二人共、食べ終わって調理実習から解放されるなり、逃げるように家庭科室から出ていってしまいました。

ついでに、じゃあ俺も、じゃあ私も、と言わんばかりに。

残っていた、鮭茶漬け担当の男子生徒と、ステーキ担当の女子生徒も、いなくなってしまったので。

結局、後片付けを担当したのは。

「済みませんね、奏さん。何だか色々と付き合わせて頂いて」

「いや…。俺に出来ることなら、何でもやるって言ったばかりだし…。それに、皆帰っちゃったし」

と、奏さんは、洗い終わったお皿を、ふきんで拭きながら言いました。

「瑠璃華さんだけに、押し付ける訳にはいかないから…」

と、奏さんは言いました。

その素晴らしい心意気を、他の四人にも見習って欲しかったですね。

四人共、食べ終えるなり消えてしまいました。

世間では、これを食い逃げと呼びます。

犯罪ですね。

「ともあれ、無事に終わって良かったですね」

と、私は言いました。

が。

「無事…無事、なのかな…」

と、奏さんは不安そうに呟きました。

…?無事、なのでは?

「瑠璃華さんが…少しずつ、クラスから浮いちゃうんじゃないかって…俺は心配だよ」

と、奏さんは言いました。

奏さんの心配していることの意味が、私にはよく分かりませんでした。

つまり、人間で言うところの人間関係とは、非常に複雑で、理解し難いものであるということです。
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