アンドロイド・ニューワールドⅡ
「お弁当箱を持っていなかったので、商店街の雑貨屋で、『人間の文化を感じられるお弁当箱を探しています』と言ったら、これを勧められました」

「そういう聞き方をしたんなら、まぁそうなるだろうね」

「そうですか」

「何となく予想が出来たんだけど、聞いても良い?」

と、奏さんは相変わらず、真顔で言いました。

「どうぞ」

「お弁当って、まさか日の丸弁当?」

と、奏さんは聞きました。

日の丸弁当。知っていますよ。

白米に、梅干しを一つ乗せただけの、質素で素朴なお弁当です。

古き良きお弁当ですが、現代においては、最早滅多にお目にかかることは出来ないでしょう。

「奏さん。さすがの私でも、日の丸弁当を自慢気に持ってきたりはしません」

と、私は言いました。

まさかそこまで、奏さんに見くびられていたとは。

何だか、気持ちが落ち込む…ような気がします。

何なのでしょうかこの気持ちは。上手く言葉に出来ません。

「え、そうなの…。それはごめん」

と、奏さんは謝罪しました。

「瑠璃華さんのこと、見くびってたかもしれない」

「そうですか。見くびられては困りますね。ちゃんと作っていますよ」

「それはごめん…。お弁当箱だけで判断してたよ」

「それは良くないですね。人は見た目で判断してはいけないという言葉があるように、お弁当も箱で判断してはいけません」

「うん。そんな格言は初めて聞いたけど…。改めて、見せてもらえる?」

「はい、喜んで」

と、私は答えました。

勿論です。一番に、奏さんに見てもらいたかったので。

二番目は久露花局長ですね。

久露花局長にも、後で写真を付けて、メールを送っておくことにしましょう。

「ご覧ください。こちらが、私の本日のお弁当です」

と、私は言いました。

そして同時に、お弁当箱をパカッ、と開けました。
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