アンドロイド・ニューワールドⅡ
「これは私が考案した、オリジナルメニューです」

と、私は答えました。

「そっか。白米に、これは…ソース…ソースでも混ぜてるの?」

と、奏さんは尋ねました。

お弁当箱の中身の、調理法を尋ねているのですね。

メインは白米ですが、しかしソースと混ぜているのではありません。

「これはチョコです」

「えっ」

「市販のクーベルチュールチョコレートを刻んで、生クリームと砂糖を加えて丁寧に湯煎し、溶けたチョコレートを、炊きたてのご飯に絡めて作った、チョコレートご飯です」

「無駄に、手間だけはかかってる…」

と、奏さんは呆然と呟きました。

無駄に、とは何ですか?

「な、なんか甘い匂いするな、とは思ったけど…。何でチョコご飯…!?」

と、奏さんは尋ねました。

良い質問です。

「私は昨日、思い出したのです」

「何を?」

「『人間交流プログラム』を始めてから、初日、私はクラスメイト数名のお弁当箱を観察しました」

と、私は答えました。

何だか、遠い昔のことのように思えますね。

「すると、お弁当というのは、茶色い食べ物がたくさん入っていることに気づきました。つまり人間は、茶色い食べ物が好きなのですね」

「あぁ…そういえばそんなこと言ってたね…。焼きそばパンにやけに執着してたのも、それが理由だったし…」

と、奏さんは言いました。

その通りです。よく覚えていてくださいましたね。

奏さんの記憶力は、久露花局長よりも上かもしれません。

久露花局長はよく、「あれ?ここに置いておいたはずのチョコがない!チョコ!何処〜っ!?」と、探し回っていますから。

そういう場合は、大抵10分程前に、局長自身が、無意識に食べてしまっていることが多いのですが。

本人が無意識で行っていること故に、指摘して良いものか分からず、今に至るまで黙っています。

久露花局長本人は、「チョコが…消えた…!」と、謎の事件感を出していました。

さて、それはともかく。

人間は、茶色い食べ物を好みます。

そして茶色い食べ物と言えば、私の中で最初に浮かぶのは。

前述の通り、久露花局長が普段から狂ったように食べている、チョコレートです。

では、チョコレートをお弁当に入れようと思いました。

しかし、そのままチョコレートだけを入れたのでは、「学校にお菓子を持ってきた」と、教師にバレたら面倒なことになるかもしれません。

そこで思いついたのが、このチョコレートご飯です。

こうして白米にチョコレートを混ぜることで、茶色いお弁当を再現することが出来ます。

素晴らしい発想ですね。
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