アンドロイド・ニューワールドⅡ
「な…何でそんな危険なことしてるの!?」

と、奏さんは、口から溢れたお茶を拭いながら聞きました。

危険?

「何処に危険が潜んでいるのですか?」

「いや、ひ、ひとりかくれんぼなんて…!やっちゃ駄目でしょ!」

と、奏さんは珍しく、声を荒らげて言いました。

何故そんなに唾を飛ばすのか、理由が分かりません。

「何で?いきなりどうしちゃったの瑠璃華さんは!昨日まで、平和にお弁当作りを…いや、それはそれであんまり、平和とは言えなかったけど…」 

「何がですか?」

「でも!そんな危険を伴うものではなかったのに!どうして一夜にして、そんな危険に手を出すことになったんだよ!?」

と、奏さんは聞きました。

なかなかの気迫ですね。

ひとりかくれんぼに、何か思い入れがあるのでしょうか。

「昨日、『猿でも分かる!初心者のお弁当』という本を読んだとき、別の本も見つけたのですが」

「うん…」

「その本のタイトルが、『猿でも分かる!初心者のひとりかくれんぼ』という本です」

「むしろ、上級者はどんなひとりかくれんぼをしてるのか、逆に気になるところだね」

と、奏さんは言いました。

真顔です。

今日も奏さんは真顔です。

私はいつも、彼をこれ程真剣にさせることが出来るのですね。

「奏さんは、ひとりかくれんぼをご存知なのですか?」

と、私は尋ねました。

「知ってるよ…一応…」

「もしかして、上級者の方ですか?」

「期待してるところ悪いけど、実は一度もやったことがないよ」

と、奏さんは言いました。

そうでしたか。それは残念です。

「でも、やり方はご存知なのですよね」

「うろ覚えだけど…。確か、ぬいぐるみにお米を詰めて、お風呂に浸けて…とかやるんでしょ?」

「はい。ぬいぐるみに名前をつけ、赤い糸で縫って、『最初は私が鬼だから』と言い聞かせて、風呂桶の中に浸けます」

「…詳しいね…」

と、奏さんは言いました。

えぇ。実践しましたから。

「ちなみに、ぬいぐるみの名前は奏さんにしました」

「何で俺…!?」

「いえ、一番親しみが持てる名前かと思いまして」

と、私は答えました。

もし何かあって、ぬいぐるみが私に襲い掛かってくることがあっても。

相手は奏さんだと思えば、少しも脅威には感じませんしね。

久露花局長にしようかと思ったのですが、局長というのは名前ではなく呼称なので。

「そ、それ…大丈夫だったの?」

と、奏さんは心配そうな顔で聞きました。
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