アンドロイド・ニューワールドⅡ
「大丈夫、とは?」

「いや…そんな危険なことしてるなら、何か怪奇現象に見舞われたんじゃないかって…」

と、奏さんは言いました。

怪奇現象ですか。

「俺、ひとりかくれんぼなんてやったことないけど…。あれってヤバいんじゃないの…?」

「何がヤバいのですか?」

「いや…。何かこう…足音が聞こえたとか、声が聞こえたとか…。あ、でも…正しくやれば大丈夫なんだっけ?確か、塩水を口に含んで…」

と、奏さんは言いました。

詳しいですね。

もしかして、やったことがないと言いながら、奏さんも経験があるのでしょうか。

「ちゃんと、塩水用意した?」

「そのつもりでした」

「何をしちゃったの!?」

と、奏さんは身を乗り出して尋ねました。

そんなに心配なさらなくても、大丈夫です。

何かあったとしても、私は人間ではなく、『新世界アンドロイド』ですので。

「いえ、用意はしたのですが、口に含んでみてから、私が水の中に入れたのが塩ではなく、砂糖だったことに気が付きました」

「砂糖水作っちゃったってこと!?」

「はい」

と、私は頷きました。

私も知らず知らずのうちに、久露花局長の脳みそに染まっているのかもしれません。

「だ、大丈夫だったの…!?何か、怪奇現象とか…!」

と、奏さんの顔は青ざめています。

大丈夫でしょうか。

何か怪しいものでも見つけたのでしょうか。

「はい、私の用意した本は初心者向けのひとりかくれんぼですので、用意したのが砂糖水でも、何とかなりました」

「それ、初心者関係ある…?」

と、奏さんは聞きました。

えぇ、きっと関係あります。

これが上級者のひとりかくれんぼだったら、私がいくら『新世界アンドロイド』と言えども。

今頃、冥界送りにされていたかもしれません。

危ないところでした。

さすがの私も、異形の化け物と戦ったことはありませんので。

負けるつもりはありませんが、万が一ということもあります。

「まぁ、何事もなかったなら、良かったよ…。本当、危ないことするんだから…」

と、奏さんは言いました。

ホッとしたような顔です。

私に何事もなかったと聞いて、安心したようです。

心配してくれる人がいるというのは、とても有り難いことですね。

「はい。無事に…謎の足音と呻き声が聞こえてきただけで済みました」

「ちょっと待った。ちょっと待った!今何だって?」

と、奏さんの顔色が変わりました。
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