アンドロイド・ニューワールドⅡ
「奏さんは、丑の刻参りをご存知ですか?」

「ご存知…って、昔怪談話で聞いた程度の知識しかないけど…」

と、奏さんは困ったように答えました。

成程。では丑の刻参りに関しては、私の方が知見が深いということですね。

丑の刻参りのことなら、何でも私に聞いてください。

この世には、過ぎたるは及ばざるが如しという言葉がありますが。

こと知識においてだけは、持ち過ぎて困ることはありません。

「確か…藁人形に、五寸釘を刺すんだよね…?」

「はい。自作の藁人形を打ち付けました」

「怖っ…。あ」

と、奏さんは言いました。

あ?

「まさか…。いや、もしかして…」

「はい?」

「丑の刻参りって、誰かの写真を使って、その人を呪うんだよね?もしかして…俺じゃないよね?俺を呪ったの?」

と、奏さんは顔を真っ青にして聞きました。

「いえ…。奏さんを呪ってはいません」

と、私は答えました。

すると奏さんは、心底ホッとしたように溜め息をつきました。

「良かったぁ…。俺、呪われてるのかと思ったよ」

「最初は、奏さんを呪おうかとも思ったのですが」

「…候補に入ってたんだ、俺…」

と、奏さんは怯えたように言いました。

「俺、瑠璃華さんに何か恨まれるようなことしたっけ…?」

「何もしていませんけど」

「そっか…。じゃあ、誰が呪いの餌食になったの…?」

「それは久露花局長です」

「…」

と、奏さんは無言になりました。

しばしの沈黙の後。

「…瑠璃華さん、その局長さんに…何か恨みでもあるの?」

と、奏さんは聞きました。

「いえ、特に恨みはありませんが…すぐ手元に写真があったので」

「そっか…。そんな理由で選ばれるのか…。つくづく、俺危なかったな…」

と、奏さんは囁くように言いました。

「久露花局長の写真に、釘を打ち込んできました」

「気の毒な局長さん…。今頃、呪われてないと良いけど…」

と、心配性な奏さんは、久露花のことを心配して言いました。

局長…今頃お元気にしているのでしょうか?
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