アンドロイド・ニューワールドⅡ
スマートフォンですか。

聞いたことはありますが、初めて見ましたね。

「どうしたのですか、いきなりスマートフォンとは」

と、私は聞きました。

人間達にとっては、必須アイテムとも言えるスマートフォンですが。

『新世界アンドロイド』である私達には、特に必要のないものでした。

通信や連絡は、脳内で出来ますし。必要ならパソコンを使いますし。

検索機能も脳内についているので、わざわざ持つ必要がありませんでした。

紺奈局長も、そのことはご存知のはずです。

それなのに、何故わざわざ、碧衣さんにスマートフォンをプレゼントしたのでしょう。

「これは愛ですね。紺奈局長から僕への、離れていてももっと繋がりたいという、愛の証です」

と、碧衣さんはうっとりとして、スマートフォンを抱き締めました。

これほど恍惚として、スマートフォンを抱き締めている人を初めて見ました。

人ではなく、アンドロイドですが。

「それは良かったですね。おめでとうございます」

「はい!」

と、碧衣さんは満面の笑顔で言いました。

アンドロイドだとは思えない笑顔です。

「紺奈局長は、これを使ってクラスメイトと連絡を交わして、友人作りに役立てるように…とも言っていましたが」

と、碧衣さんはどうでも良さそうに言いました。

成程、そちらが本当の理由なのですね。

「そんなの建前ですよね!僕と常に繋がっていたいからに決まってます。うふふ。局長のリクエストにお応えして、僕昨日から…毎分、局長にメッセージを送り続けているんです」

と、碧衣さんは目をギラギラさせて言いました。

そんなホラー映画があったような気がします。

「それって、返事は来てるんですか?」

「うふふ。紺奈局長はシャイですから、なかなか返事をしてくれないんです」

と、碧衣さんは言いました。

返事が来てないのに、嬉しそうですね。

「でも、僕の心の中には、ちゃんと返事が届いてますよ。スマートフォンって、なんて素敵なアイテムなんでしょう!」

と、碧衣さんは笑顔で言いました。

「瑠璃華さんも、スマホ買ったらどうです?交友関係めっちゃ広がりますよ」

「そうですね…。考えておきます」

と、私は答えました。

それって交友関係、広がってるのでしょうか。

何にせよ、碧衣さんが嬉しそうで何よりですね。

それから、ドーナツご馳走様でした。
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