アンドロイド・ニューワールドⅡ
と、いうきっかけがあったその日。

その日は、久露花局長との定期連絡の日でした。

「こんばんは、久露花局長」

『やっほー…。瑠璃華ちゃん…』

と、画面の向こうの局長は、力なく手を振りました。

おでこに湿布を貼っているように見えますね。

それに、何故だか元気がありません。

いつもの「やっほー」に、覇気がこもっていませんね。

「どうしましたか、局長。チョコレート不足ですか」 

と、私は尋ねました。

チョコレートが足りていないときの久露花局長は、ガソリンの足りていない車と一緒です。

局長に元気がないということは、きっとチョコレート不足なのだろう…と、思ったのですが。

『いや、チョコレートは足りてるんだけど』

と、局長は言いました。

成程、チョコレートは足りているのですね。

それなら、どうして局長に元気がな、

『どうも最近、運が悪いことが多くてね…。今日も、道を歩いてたら、頭の上にちっちゃい植木鉢が落ちてきて…』

「…」

『痛かったよ〜…。何なんだろうなぁもう…。昨日は机の角で足の小指打って、一時間悶絶してたし…』

「呪いの効果は、未だ持続しているようですね」

『へ?呪い?』

「いえ、何でもありません」

と、私は答えました。

世の中には、知らない方が良いこともあるということです。

『それはともかく…。瑠璃華ちゃん、今日碧衣君に会ったでしょ?』

と、局長は聞きました。

局長方は、私達『新世界アンドロイド』の居場所を常に把握しているので、私と碧衣さんが遭遇したことも知っています。

「はい、会いましたね」

『どんなお話してたの?』

「碧衣さんが、紺奈局長にスマートフォンをプレゼントしてもらって、碧衣さんはそれを使って、毎分紺奈局長にメッセージを怒涛の如く送り続けているそうです」

『…紺奈局長…大丈夫かなぁ…』

「どうでしょう」

と、私は言いました。

『紺奈局長は何だってまた、スマホをプレゼントしたんだろう…?』

「紺奈局長の意図は、詳しくは不明ですが…。碧衣さん曰く、交友関係を広げるアイテムだそうです」

と、私は碧衣さんから聞いたことを答えました。

彼の場合、それで本当に交友関係が広がっているのか、それとも狭まっているのか、判断しかねます。

「私も買ってはどうかと勧められのですが、局長はどう思われますか?」

と、私は尋ねました。

私は第4局に所属する『新世界アンドロイド』ですので、久露花局長の指示に従います。

久露花局長が、「やめておいた方が良い」と仰るなら、その通りに…。

『うん。瑠璃華ちゃんはどう思う?』

と、久露花局長は、逆に聞き返してきました。

私がどう思うか…ですか。

それは難しいですね。
< 145 / 467 >

この作品をシェア

pagetop