アンドロイド・ニューワールドⅡ
「ご覧ください、奏さん。いえ。本当は校則違反ですので、あまり自慢気に見せて良いものではないのですが」

「あ、瑠璃華さん!スマホ買ったんだ?」

と、奏さんはこの反応です。

彼も驚いたようですね。

「はい。遅れ馳せながら、時代の最先端を行ってみようかと思いまして」

「そうなんだ…。瑠璃華さんスマホ持ってないから、持たない主義なのかなと思ってたけど、そんなことはなかったんだね」

「はい。実は知人、いえ知アンドロイドに勧められまして」

「あぁ…。花火大会のときに会ったあの人か…」

と、奏さんは言いました。

思い出してくださったようで何よりですが、あの方は人ではなく、アンドロイドです。

「これを持つことで、交友関係が広がるそうです」

「まぁ、確かに広がるかもね。今時は、SNSとか発達してるし…」

「まずは、私の携帯番号とメールアドレスを書いた紙を、全学年の掲示板に貼ることで、メル友を増やそうかと思うのですが」

「うん。それはやめておいた方が良いと思うよ。心から」

「そうですか」

と、私は言いました。

奏さんがそう仰るなら、やめておくとしましょう。

一気にお友達を増やす、良い方法かと思ったのですが。

世の中、そんなに甘くはないということでしょうか。

「ではまず、奏さんの番号を登録させて頂いても宜しいでしょうか」

「勿論。俺も瑠璃華さんの番号知りたい」

と、奏さんは言いました。

ありがとうございます。

やはり一番に登録するのは、一番の親友ですね。

「じゃあ、連絡先交換…っと」

と、奏さんと私は、互いのスマートフォンに互いの連絡先を登録しました。

何だか、むず痒い気がしますね。

蕁麻疹でも出たのでしょうか。

「それでさ、瑠璃華さん。一つ質問して良い?」

「はい、何でしょう?」

「初めて見る機種だけど、それ何て言う機種なの?」

「『超絶らくらくフォン』だそうです」

「もしかして、いやもしかしなくても、それシニア向けの機種じゃない?」

「はい。私はスマートフォンを持つのは初めてなので、携帯ショップに行って、『使い方が猿でも分かるスマートフォンをください』と頼んだ結果、この機種に落ち着きました」

「そっか。まさか店員さんも、そんな注文をされるとは思ってなかっただろうね」

と、奏さんは言いました。

「何か問題があるのでしょうか?」

「いや、問題はないけど…。高校生でスマホデビューして、シニア向けの機種持ってるのは、瑠璃華さんくらいだろうなぁって」

「成程、何でも人と違うことに挑戦するのは、良いことですね」

「…前向き…」

と、奏さんは呟きました。
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