アンドロイド・ニューワールドⅡ
翌日。

昨日、碧衣さんに教えてもらったことを参考に。

「奏さん。私はこのスマートフォンに、アプリケーションをインストールしてみようと思います」

と、私は奏さんに言いました。

「あ、良いね。スマホの醍醐味だよね…。何のアプリを入れるの?」

「はい。私がアプリケーションをインストールするに当たって、奏さんに一つ頼みたいことがあるのですが」

と、私は言いました。

これは、碧衣さんに言われたことです。

彼のおすすめのアプリケーションをインストールするには、この手順が必要だと。

「え、何?俺何すれば良いの?」

「奏さんのスマートフォンを、少し貸してくれませんか」

「俺の…?別に良いけど…」

と、奏さんは困惑しながらも、自分のスマートフォンを差し出しました。

では、有り難くお借りします。

「申し訳ありません。どうしてもこの作業が必要だそうで」

「…??一体何の作業?自分のスマホにアプリを入れるのに、他人のスマホが必要なアプリなんてあるの…?」

「はい。相手のスマホに、先に位置特定アプリをインストールさせておくことによって、私は常に奏さんの位置情報を把握し、あ、」

「はい没収」

と、奏さんは言いながら、私の持っていた奏さんのスマートフォンを、私の手からもぎ取りました。

奪い返されてしまいました。

一生の不覚です。

「俺のスマホに、何をしようとしてるの…!?」
 
と、奏さんは血相を変えて言いました。

どうされたのでしょうか。いきなり。

「何をと言われましても…。知り合いから勧められたアプリケーションを、使用してみようと思いまして」

「何のアプリ…?」

「GPSを利用した、位置情報アプリです。これを使用すると、私は常に、奏さんの位置情報が分かることになります」

「なんて恐ろしいアプリを勧めるんだ…。どんな知り合いだよ…」

「碧衣さんです」

と、私は答えました。

「あぁ、花火大会のときに会ったあの人…。成程、あの怪しい…いや妖しい人か…何だか納得したよ…」

と、奏さんは言いました。

人ではなく、彼も私と同じ『新世界アンドロイド』なのですが。

「貸してくださいませんか、奏さんのスマートフォン」

「ごめんね。貸しません」

と、奏さんは微笑みながら、きっぱりと言いました。

親友だからといって、何でも貸してくださる訳ではないということですね。

世の中の厳しさを、思い知らされた気分です。
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