アンドロイド・ニューワールドⅡ
「では私はこれより、心を入れ替え…別のアプリの使用を検討します」

「うん、それが良いよ」

「まず手始めに、ボイスレコーダーアプリをインストールします」

と、私は言いました。

…が。

「…ちなみにそのアプリ、何に使うの?」

と、奏さんは尋ねました。

「?無論、盗聴用です」

「さらっと、とんでもなく軽いノリで、とんでもないことをしようとしてるね」

と、奏さんは真顔で言いました。

とうとう、奏さんが真顔モードに入ってしまいました。

「それも、碧衣さんっていう知り合いに勧められたの?」

「はい。愛用しているそうです」

「…危険な友人をお持ちだなぁ…」

と、奏さんは呟きました。

友人って、碧衣さんのことでしょうか。

碧衣さんは私の友人ではなく、アンドロイド仲間です。

「危険だから。やめよう」

「これも駄目ですか…。では、消音機能付きカメラアプリはどうでしょう」

「…それも、碧衣さんって人に勧められたの?」

「はい。盗撮に持ってこいだと言っていました」

「そっか。やめようね」

と、奏さんに、ほんわかと止められてしまいました。

これも駄目だと言うのですか。

「では、相手の通話履歴とメール送信履歴を盗み見るアプリ、」

「それも碧衣さんに勧められたの?」

「勿論です」

「そっか。駄目だからね」

と、奏さんはまたしても、ほんわかと止めました。

「止められてばかりで、これでは私は、一つもアプリケーションをインストールすることが出来ません」

「うん。俺も出来ることなら、瑠璃華さんのスマホデビューを華々しく応援したいんだけど。如何せん、危険なストーカーアプリばっかりインストしようとしてるから、止めざるを得ないんだよ」

と、奏さんは真顔で言いました。

そうですか。

「しかしその碧衣さんも、よくそんなストーカーアプリばっか入れてるなぁ…。スマホの用途がおかしいでしょ…」

と、奏さんは嘆くように言いました。

今度会ったとき、碧衣さんに伝えておきます。

「良い?瑠璃華さん。何だか危険な友達を持ってるようだけど、その人の言うことを聞いたら駄目。危険なアプリを入れるのはやめよう」

「…分かりました…」

「何で、ちょっと残念そうなの…?」

と、奏さんは聞きました。

私には感情がないので、残念そうな顔をすることなないはずですが。

そして、碧衣さんは私の友人ではありませんし、そして人でもありません。
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