アンドロイド・ニューワールドⅡ
私がインストールしようとしていたアプリケーションを、ことごとく奏さんに止められてしまいましたので。

現状、私のスマートフォンは、スカスカの空っぽ状態です。

それはそれで、内容量に充分な空きを確保することが出来て、良いのかもしれませんが。

折角スマートフォンデビューを果たしたというのに、何だか宝の持ち腐れのような気がしますね。

もう少し、何か別の用途に扱えないものでしょうか。

「奏さんは、どのようなアプリケーションを愛用されているのですか?」

「俺?うーん…そうだなぁ。一番良く使ってるのは、やっぱりメールとか電話かな…」

と、奏さんは答えました。

主に、連絡手段として用いているようです。

「あと、ネットニュースの速報が見られるアプリも入れてるよ」

と、奏さんは教えてくれました。

情報の最先端を行くスタイルのようです。

とても良い心掛けですね。

「しかし、私は脳内ですぐに検索が可能なので、常に最新のニュースを把握出来ます」

「あぁ…そうなんだっけ。じゃあニュースアプリは必要ないのか…」

「他に、どのようなアプリケーションをお使いですか?」

「えーと…。これは…便利アプリと言うか、ゲームアプリなんだけど」

と、奏さんは言いました。

ゲームアプリ?

「農場経営アプリやってる…」

と、奏さんは言いました。

何故か、ちょっと恥ずかしそうです。

何も恥じることはありません。堂々と仰ってくれて結構ですよ。

それにしても。

「農場経営ですか…?」

「うん。小麦とかトウモロコシとか育てて…」

「奏さんは農家になりたいのですか?」

「そういう訳じゃないけど…。あとは、牛とか鶏を育てたりして…」

「奏さんは酪農家になりたいのですか?」

「現実でなりたい訳じゃなくて、あくまでシミュレーションゲームで楽しむだけだよ」

と、奏さんは教えてくれました。

成程、シミュレーションゲームですか。

「現実ではなかなか出来ないけど、スマホの中でだったら簡単に出来るから。その手軽さが良いって言うか…。それに、もし失敗したとしても、あくまでゲームだからね」

と、奏さんは言いました。

確かに、現実で小麦栽培が大失敗してしまうと、家庭の食卓に影響が及びますが。

ゲームの中の出来事なら、誰も困る人はいませんね。

その手軽さが、シミュレーションゲームの魅力なのですね。

理解しました。

「現実では出来ないことを、スマートフォンの中で行なうのですね?」

「そう、そういうイメージ」

「分かりました。では、私も試してみます」

「うん、それが良いよ。少なくとも、ストーカーアプリの百倍は良い」

と、奏さんは言いました。

碧衣さんのおすすめアプリケーションは、そんなに駄目なのですか。

今度、碧衣さんに伝えておきます。
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