アンドロイド・ニューワールドⅡ
しかし、私がアクアリウムアプリゲームに順応出来なかったのは、それだけが理由ではありません。

もっと、大きな理由があるのです。

「最初は良かったのです。我が家で飼っているのと同じ、金魚を水槽に入れました」

「そうか。金魚…瑠璃華さん飼ってるんだもんね」

「はい。マグロもサケもキンメダイも、順調に大きくなっています」

「…うん。養殖業者に聞こえるけど、これ金魚だから。うん」

と、奏さんは呟いていました。

養殖業者?

話を戻しまして。

「まず金魚を水槽に入れたのですが、金魚だけでは水槽の中が寂しかったもので」

「そうだね。アクアリウムって、色んな魚がいるのが醍醐味だもんね…。金魚だけじゃ寂しいよね」

「次に、メダカを入れました」

「あー、メダカか…。それも定番だなぁ」

と、奏さんは言いました。

「金魚とメダカか…。一種類増えたけど、まだやっぱり寂しいね」

「はい。水槽に、もっと彩りが欲しいと思いまして」

「そうだね。メダカはあんまり色ついてないし…。そろそろグッピーとか、」

「ピラニアを入れてみたのですが」

「何でそうなったの?」

「そうしたら、水槽の中の金魚とメダカが全滅しました」

「だろうね!」

と、奏さんは言いました。

ピラニアを一匹、水槽に入れた結果。

私のアクアリウムは、一瞬にしてピラニアが食物連鎖の頂点に立ち。

ピラニアが全てを食い尽くしたことにより、水槽の生態系が壊滅しました。

こうして、私のアクアリウムデビューは、ピラニア一匹によって終了させられたのです。

悲惨な結末を迎えてしまった訳ですね。

とても切ないです。

「色とりどりの深海魚が蔓延る、素敵な水槽にしたかったのですが…」

「うん…。残念ながら、それは瑠璃華さんには無理な相談だったよ」

と、奏さんは言いました。

「ピラニアに食べられて亡くなった金魚達の追悼の為にも、私はその後、アクアリウムアプリケーションをアンインストールしました」

と、私は言いました。

よって、私のアクアリウムチャレンジもまた、終了した訳です。

一度目があまりに悲惨な結末を迎えたので、二度目を挑戦する気になれませんでした。

現実だけではなく、アプリケーションの中でも、食物連鎖は時に残酷です。

自然の理と言えば、その通りなのですが。

「そっか…。それは残念だったね」

「はい」

「育てる系のアプリは、瑠璃華さんには難しいのかな…?でも、ガチャを回すようなソシャゲーは、やっぱり課金を迫ってきたりとかするし…」

と、奏さんはぶつぶつと言いました。

ソシャゲー…?課金…?

「水の中の生き物にこだわらずに、別の生き物を育てたら?可愛いペットゲームなら、他にもたくさんあると思うよ」

と、奏さんは勧めてくれました。

「そうですね。一度アクアリウムアプリゲームをインストールしただけだというのに『あなたへのおすすめ』一覧が、育成シミュレーションゲームでいっぱいです」

「辛辣な言い方…。だけど、そういうおすすめ一覧から選ぶのは、アリだと思うよ」

「分かりました。では、今度はその中から試してみます」

と、私は言いました。
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