アンドロイド・ニューワールドⅡ
「え、死ぬの?」

「はい。飼育を始めておよそ8年ほどで、最初に飼っていたうさぎが死にました」

と、私は昨日のアプリケーションゲームを振り返って言いました。

突然、「うさぎが死にました」のテロップが入って、私は心底びっくりしました。

まさか、うさぎが亡くなるとは思ってもみませんでした。

「死ぬんだ…。珍しいこともある…、いや…まぁ、そういうアプリもあるのかな…」

「まさか死ぬとは思っていなかったので、度肝を抜かれました。いえ、私に肝はありませんが」

「そっか。でも、確かに死ぬのは悲しいね。折角育ててたのに」

「はい。非常に衝撃的でした」

と、私は答えました。

「それは切ないね…。成程、いくら子孫が増えるとはいえ…。一定年数で死ぬのは悲しいな…。瑠璃華さんがやめた理由が分かったよ」

「えぇ。おかしいとは思っていたんです。育ててから4〜5年ほどたっても、何もイベントが起きなかったので…。まさか寿命を迎えて死ぬシステムになっていたとは…。それを知っていたら、あのようなアプリケーションに挑戦したりはしなかったのに」

「…?何で?4〜5年たったら、何があるの?」

と、奏さんは首を傾げました。

「だって、出荷するならそれくらいの年数が妥当では?」

「は?」

「餌にも力を入れ、まるまるとよく太ったうさぎが育っていたのに…。いつまで経っても出荷せず、そのまま飼い続けるものだから、おかしいと思っていたら…」

「いやいやいや。ちょ、ちょっと待って。何?何の話?」

と、奏さんは声を大きくして言いました。

?大丈夫でしょうか。

何か不思議なものでも見えたのでしょうか。

「瑠璃華さんもしかして、食肉用に出荷する為に育ててたの?」

「え?うさぎを飼育する理由なんて、食べる以外に何があるのですか?」

「食べないよ!」

と、奏さんは声を荒らげて言いました。

これには、私の方が驚きました。

「食べないのですか?」

「食べない!良い?そういうゲームは…飼って育てて、『可愛いな〜』って鑑賞する為にやるのであって、決して出荷用じゃないんだよ」

と、奏さんに説明され。

私は、非常に大きな衝撃を受けました。

まさか、うさぎが愛玩用の動物だったとは。

うさぎと言えば、食肉用だとばかり思っていました。
< 157 / 467 >

この作品をシェア

pagetop