アンドロイド・ニューワールドⅡ
「アプリケーションを進めるにつれて、どうにも幼馴染みの態度が、馴れ馴れしくなってきまして」

「馴れ馴れしいって…。それは親密度が上がったってことなんじゃないの?」

「一緒に出掛けた跡の帰り際、『今夜はお前を帰したくない』などと、脅迫まがいの台詞を言われました」

「…乙女ゲーだ…。典型的な乙女ゲーだ…」

と、奏さんは呟きました。

乙女ゲーとは何のことですか。

「更にその台詞の後、路上で人目も憚らず、抱き締められました」

「おぉ…。萌えポイントだ」

「完全に変質者の行動だとは思いませんか?」

「その萌えポイントが…瑠璃華さんにかかったら、変質者扱いだよ…」

と、奏さんは呟きました。

萌えポイントとは何のことでしょう。

「そのときは、何とか逃げ切りましたが」

「逃げ切ったんだ」

「はい。しかし次会ったら、何をされるか分かりません。非常に恐ろしい、ストーカーまがいの行為だと思います」

と、私は言いました。

恋人関係でもないのに、あのような態度…非常に危険ですね。

何をされるか分かりません。

「それも、イケメンだから許されるのでしょうか?」

「いや、イケメンだからって言うか…恋人だったら許されるんじゃないの?」

「恋人?私はあの幼馴染みと、恋人になった覚えはありませんよ」

「…辛辣…」

と、奏さんはポツリと言いました。

「だって、一度として私は彼と、『今から恋人関係になりましょう』という言葉を交わしたことはありません」

「うん…。成程、瑠璃華さんの恋人になるには、その台詞が必要なんだね…」

「はい?」

「いや、分かってるよ。瑠璃華さんはそういう人だって」

と、奏さんは言いました。

私は人ではなく、『新世界アンドロイド』です。

「ちなみに瑠璃華さん、もしその幼馴染みに、『今日から恋人になりましょう』って言われたとしたら」

「はい?」

「恋人になっても良いの?その幼馴染みと」

「いえ、お断りします」

「…断るんだ…」

と、奏さんは呟きました。

勿論お断りします。

「幼馴染み、そんなに好きじゃない?」

「幼馴染みは関係なく、他人の不幸を嘲笑う、その態度が気に入りません」

と、私は言いました。

「成程。じゃあ俺は、もし瑠璃華さんがテキストを忘れることがあったら、そのときは全力で優しくするよ」

と、奏さんは言いました。

何が「じゃあ」なのか、意味不明です。
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