アンドロイド・ニューワールドⅡ
そして、奏さんに聞きたいことはもう一つあります。

極めつけは。

「しばらくして、プロポーズされました」

「おぉ。プロポーズまで行ったんだ」

「そこで、イエスかノーか、選択肢が出てきたのですが…」

「…うん。瑠璃華さんのことだから…」

「お断りしました」

「…だよねー…」

と、奏さんは言いました。

奏さんも予測済みだったようです。

それは勿論、お断りするに決まっています。

「一応聞いておくけど、何で断ったの?やっぱり笑われたから?」

「いえ。そもそもお付き合いもしていない、恋人でもないのに、いきなり結婚してくれと言われても困ります」

「そっか。瑠璃華さんの中では、それまであったであろうアプローチは、全部カウントされてないんだね」

と、奏さんは真顔で言いました。

アプローチとは、何のことでしょう。

「私がお断りするのは、当然のことだと思ったのですが…」

「うん。ああいうゲームって、断ったらどうなるの?」

「バッドエンドになりました」

「…そうなるんだ…」

と、奏さんは言いました。

いきなり画面が暗転して、バッドエンドの文字が浮かび上がりました。

そして、強制的にゲームタイトルまで戻らされました。

最初からやり直せ、ということです。

何故プロポーズを断っただけで、やり直さなければならないのか、理解不能です。

「私はどうするべきだったのでしょう?何故プロポーズを断っただけで、バッドエンドになるのでしょうか」

「それは…」

「これでは、現実でもプロポーズを断った女性は、人生をやり直さなければならなくなります。それはあまりに理不尽なのでは?」

と、私は言いました。

私にだって、選択する自由というものがあるのではないでしょうか。

何故、断っただけでバッドエンドにされるのですか?

そのエンドがバッドであるかグッドであるかは、アプリケーションではなく、私が決めることです。

「うん、そうだね。現実だったらそうだろうと、俺も思うよ」

と、奏さんも同意しました。

やはりそうですよね。

「でも、それゲームだから。しかも乙女ゲーのエンディングって、プロポーズされてOKしてゴールイン、っていうのが一連の流れだから。それを断ったら、そりゃバッドエンドにもなるよ」

と、奏さんは興味深いことを言いました。

成程。プロポーズされたらOKする、というのが、あのアプリケーションのセオリーなのですね。

「理不尽ですね。私はあんな男とは結婚する気は微塵もないのに、嫌でもOKしなければ、グッドエンドに進めないとは…」

「辛辣…。でも、そうなんだよ。乙女ゲーだからね」

と、奏さんは言いました。

乙女ゲーというのは、結局何だか分かりませんでしたが。

「では、次は嫌でも、イエスを選んでみようと思います。また別の感情を学べるかもしれません」

「うん。次は幼馴染みじゃなくて、別の男子を選んでみたら?」

「そうですね。6人いましたから…。次は、金髪のチャラい系男子を攻略してみようと思います」

「…」

と、奏さんは無言になりました。

「…どうかしましたか?」

「いや、あの…。一応聞いておくけど…瑠璃華さん…金髪のチャラ男が好きな訳じゃないんだよね?」

「…?二番目に登場したのが、そのキャラクターだっただけですが」

「そっか…。良かった…」

と、奏さんはホッとしたように言いました。

何が良かったのか、理解不能です。
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