アンドロイド・ニューワールドⅡ
一体どのようなご用件でしょうか。

「今度の文化祭の、役割決めだけど」

と、湯野さんは、大した前置きもなく、本題を切り出しました。

文化祭ですか。

丁度今、その話を奏さんとしていたところです。

タイムリーな話題ですね。

「緋村は、いつも通りで良いわよね?」

と、湯野さんは聞きました。

聞いたと言うよりは、ほぼ断定的ですが。

何だか威圧するような言い方で、奏さんでなくても、思わず萎縮してしまいそうです。

「…うん、良いよ」

と、奏さんはポツリと言いました。

…?

何が良いのでしょう。いつも通りとは何のことでしょう?

理解不能です。

「で、今年だけど、電波ちゃんにも手伝ってもらいなよ」

と、湯野さんは更に言いました。

私ですか?

私が、何を、誰を、どのように手伝うのでしょうか。

私には何の説明もなく、話が進んでいますね。

どなたか、一体これはどういうお話なのか、説明して頂きたいものです。

「…!そんな…瑠璃華さんは、別の役にしてあげてよ。あれは俺一人でやるから」

と、奏さんは湯野さんに、異議申し立てをしました。

あれ、とは何のことでしょう。

奏さんは文化祭の日、何をやることになっているのでしょうか。

「は?何で?」

「だって…!折角初めての文化祭なのに…。もっと楽しい役を…」

「しょうがないでしょ?楽しいことやりたいのは、誰だって一緒よ。誰かがやらなきゃいけないことなんだから、それが電波ちゃんでも、何の問題もないでしょ?」

と、湯野さんは勝ち誇ったように言いました。

話の事情が全く分かっていないので、彼女の言っていることが正論なのか否か、判別出来ません。

私の名前が出た以上、私も当事者の一人だと推測します。

よって、私にも事情を詳しく話してくださることを、強く希望します。

「それに今年は喫茶店をやるから、お金も大きく動くし」

と、湯野さんは言いました。

お金?

いきなり、何だか世知辛い話になりました。

お金の話というのは、大概世知辛いものです。

「緋村一人じゃ負担が大きいかと思って、補佐に電波ちゃんをつけてあげるんじゃない」

「…俺は…補佐は要らないよ。だから、瑠璃華さんは別の役に…」

「駄目よ。今年は去年までより、お金の受け渡しが多いんだから。緋村一人だけには任せられない。会計役は二人必要って決まったの」

と、湯野さんは言いました。

会計?

何だか、その一言で話が見えた気がします。

奏さんも、私も、その会計役を務めさせられようとしているのでしょうか。

「電波ちゃんと、二人で仲良く出来るんだから良いでしょ?こっちも、やりやすいように気を遣ってあげてるのよ」

と、湯野さんは恩着せがましく言いました。

「じゃ、そういうことだから、当日は宜しく」

「ちょっ…。まっ…」

と、奏さんは止めようとしましまが。

湯野さんは、もうこの話は終わり、とばかりに。

スタスタと、歩き去っていきました。
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