アンドロイド・ニューワールドⅡ
『それはアレかな。ねぇ、メニューは』

「はい?」

『やっぱりチョコケーキとかあるの?チョコパフェとか?パンケーキのチョコソース掛けとか?』

と、局長はわくわくしながら聞きました。

成程、久露花局長のテンションが、いきなり高くなった理由が分かりました。

喫茶店と聞いて、大好きなチョコレートを連想したようです。

はいそうですと、答えてあげられたら良かったのですが。

「残念ながら、メニューはまだ決まっていないようです。メニューはこれから、調理係の方が話し合って決めるそうです」

と、私は答えました。

『成程…。そっか、まだか…』

と、局長は、見るからにしょんぼりとして言いました。

落差が激しいですね。

『でも、喫茶店ならきっと、チョコ系のメニューもあるよね』

と、局長は自分に言い聞かせるように言いました。

『それに、チョコ系がなくても、生クリームがあるならそれだけで正義だよね』

と、局長は意味不明なことを言いました。

正義?

『瑠璃華ちゃんは、キッチンでお料理作る係?』

と、局長は、文化祭での私での役割を聞いてきました。

「いえ、違います」

『なら、ウエイトレスするの?瑠璃華ちゃん可愛いから、看板娘になれば、きっとたくさんお客さん来るよ』

と、局長は言いました。

奏さんも、似たようなことを言っていましたね。

しかし違います。

「いえ、ウエイトレスでもありません」

『え?じゃあ何するの?』

「裏方で会計です。奏さんと一緒に」

『…案外地味だった…』

と、局長は言いました。

「確かに地味ですが、しかし重要な仕事です」

『ま、まぁそうだけど…。…ずっと会計するの?丸一日?交代なしで?』

「?交代の話など聞いていません。恐らく一日ずっとでしょう」

『えー…。何だか不公平だなぁ。クラス皆でやるなら、他の仕事も持ち回りでやれば良いのに…』

と、局長は言いました。

私もそう思いますが、しかし湯野さんにその気はないと思われます。

毎年奏さんが、一日中会計をやっているのですから。

私もまた、奏さんと同じく一日中、会計をやることになるのでしょう。

「私は、別に構いません。普通の喫茶店体験なら、またいつか経験する機会にも恵まれるでしょうし」

『そっか…』

「これが宇宙人喫茶なら、是非ともホールで働きたかったですが」

『…何?宇宙人喫茶って…』

と、局長は首を傾げました。

宇宙人喫茶をご存知ないとは、残念なことです。
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