アンドロイド・ニューワールドⅡ
朝、文化祭がスタートしてすぐ。

1年Aクラスの喫茶店も、早速オープンしました。

しかし。

「私達は、まだやることがありませんね」

と、私は言いました。

「そうだね…。まだ開いたばかりだからね。何時間か経って人が来たら、売り上げが入るはずだから…。その頃に、お店の方にお金を取りに行こう」

と、奏さんは言いました。

私達は、1年Aクラスの教室の、隣の空き教室にて。

机と椅子を並べて、二人だけで待機していました。
 
ここが、会計の控え室だそうです。

もう何時間かして、売り上げが出始めた頃に、お金を回収しに行き。

ここに持ってきて、その売り上げ金を数え。

お金を金庫に収め、帳簿をつけるのが、私達会計の役目です。

とても地味ですが、しかし重要な仕事であることに変わりはありません。

「それまで暇だろうから、スマホ弄ったりしてても良いと思うよ」

と、奏さんは言いました。

校内は段々と活気づいているのに、この部屋だけは、とても静かですね。

おまけに、スマートフォンを弄っていても良いとは。

「では遠慮なく、今度は年下の後輩キャラを攻略しますね」

「あ、まだ乙女ゲーやってたのか…」

「はい?」

「いや、あの、スマホ弄ってて良いって言った手前アレだけど、乙女ゲーはやめてもらって良い…?」

と、奏さんは言いました。

「何故ですか?」

「何故ってその…。目の前で女の子に乙女ゲーやられると、男としては結構…来るものがあるって言うか…」

「何が来るのですか?」

「…精神的にダメージがある」

と、奏さんは言いました。

突然の真顔モードに入っています。

何故奏さんの前でこのアプリケーションを遊ぶと、奏さんに精神的ダメージが入るのかは分かりませんが。

しかし、奏さんがやめて欲しいと言うなら、やめましょう。

私と奏さんは、親友ですからね。

親友を苦しませたくはありません。

「では、代わりに別のことをしても良いでしょうか」

「うん、乙女ゲー以外なら何でも良いけど…。何するの?」

「退屈であろうお金の計算を、少しでも楽しく行うべく…対策を考えてきました」

「対策?」

「はい、まず一つ目は、これです」

と、私は言いました。

そして、スマートフォンの画面をタップしました。

すると。

空き教室の中に、音楽が流れ始めました。
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